■3点要約
・フラッシュメモリはデータの書き込み/読み出しに使われる記憶装置の一種
・電源を切っても記憶を失わない特徴から、さまざまなデバイスに組み込まれている
・身近な所では「SD」「SSD」「USBメモリ」などに活用されている
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技術革新のめまぐるしい半導体市場では、巨額の研究開発費を投じ「IoT」や「AI」などの新技術に特化した研究開発が活発に進められています。
世界的な次世代通信規格「5G」の普及や、電気自動車に代表される「xEV(次世代車)」の需要増加に伴い、半導体市場への期待はますます高まっています。
半導体市場への理解を深めるうえで必要となるのが、専門用語の知識です。頻繁に目にすることが多い用語について、今一度、理解を深めていきましょう。
今回は「フラッシュメモリ」について紹介します。
フラッシュメモリは「記憶装置の一種」
フラッシュメモリは、データを書き込んだり読み出したりすることができる記憶装置の一種です。1987年に東芝によって開発されました。
電源を切っても記憶を失わないという特徴がある一方で、データの消去を一瞬で行えるという特徴も持っていることから、“写真のフラッシュ”をイメージしてフラッシュメモリと名づけられました。
フラッシュメモリの持つ小型軽量、静音性、耐衝撃性、省電力などの利点は、スマートフォンやタブレットなどの携帯型電子機器に求められる性能と重なるため、重宝されています。
また、近年ではHDD(Hard Disk Drive:ハード・ディスク・ドライブ)の代わりに、フラッシュメモリを集積して構成したSSD(Solid State Drive:ソリッド・ステート・ドライブ)を内蔵ストレージとするノートパソコンも多く販売されています。
フラッシュメモリをはじめとする、電源を供給しなくてもデータを保持できるメモリを「不揮発性メモリ」と呼びます。これに対し、一般的なパソコンなどに内蔵されるRAMと呼ばれるメモリは「揮発性メモリ」と呼ばれます。揮発性メモリにて記憶を保持するためには、常時、または一定時間ごとに電源を供給する必要があります。
ちなみに、フラッシュメモリは主に「NAND型フラッシュメモリ」と「NOR型フラッシュメモリ」の2種類に分けられます。それぞれ書き込み速度と読み出し速度に違いがあるため、得意とする用途が異なります。
フラッシュメモリの種類は?
フラッシュメモリのメディア形態はUSBメモリやSDカード、SSDが代表的ですが、家電やPC周辺機器など、身の回りのさまざまな電気機器にも内蔵されています。ここでは、フラッシュメモリを使用した3種のメディアについて紹介します。
フラッシュメモリを使用したメディア①「USBメモリ」
USBメモリは、USB端子を使用する、持ち運び可能な記憶装置です。パソコンなどに備えられているUSBポートに直接挿し込んでデータの読み書きを行うことができます。
記憶媒体にSSDなどと同じくフラッシュメモリを使用しており、データの読み書きが高速である点が特徴です。
現在ではほとんどのパソコンがUSBメモリを挿し込むだけで自動的に認識してくれるため、設定を行う必要もなく、誰でも簡単に使用することができます。
USB Type-Aを備えているモデルが一般的ですが、スマートフォンなどに使用されるUSB Type-BやUSB Type-Cなど、形状の異なる端子に対応するモデルも販売されています。
フラッシュメモリを使用したメディア②「SDメモリカード」
SDメモリカードは、SD規格によるフラッシュメモリで、カードタイプの記憶装置です。デジカメやノートパソコン、スマートフォン、携帯ゲーム機など多くの電子機器で使用されています。
カードタイプの記憶装置はマルチメディアカードやメモリスティックなど、かつては各社で異なるメモリカード規格が多く存在しましたが、現在ではSD規格によるものが主流です。
SDメモリカードはサイズに応じてSD、mini(ミニ)SD、micro(マイクロ)SDの3種類の形状があります。また、容量とデータ転送スピードに応じてSD、SDHC、SDXCメモリカードの3種類があり、それぞれ用途により使い分けます。
フラッシュメモリを使用したメディア③「SSD」
SSDは、HDDと同様、大容量の記憶装置であり、スマートフォンやタブレット、小型で軽量をセールスポイントとするノートパソコンに搭載されています。
従来、大容量の記憶装置にはHDDが多く使われてきました。しかし、HDDはディスクを高速回転させて磁気ヘッドでデータを読み書きする記憶装置であるため、外部の振動や衝撃に弱く、データ消去や破損などを引き起こしてしまうという弱点がありました。
一方のSSDはというと、読み書きに磁気ヘッドの移動動作を必要としないため、ランダムな高速処理ができます。また、ディスク回転のための駆動機構を持たないので軽量、静音で消費電力も低いという利点があります。
こういった理由から、携帯機器と相性が良いSSDですが、容量あたりの価格ではSSDの方が高い・HDDに比べて書き換え可能回数が少なく、データ保持期間が短い――といった弱点もあるため、完全にHDDに取って代わるようなものではありません。
フラッシュメモリは身近なデバイスに使われている
以上、フラッシュメモリについて紹介しました。
フラッシュメモリ、と聞くとピンと来なくても、USBメモリやSDカードやSSDという、一般的な記憶装置に採用されている、と知るとイメージが湧くことでしょう。興味がある方は、使っているノートパソコンの記憶ストレージにSSDが使われているのか、HDDなのか、調べてみてもよいかもしれません。