壁面熱負荷特性は冷却水の温度で計測

角田宇宙センターは1965年、旧NAL(航空宇宙技術研究所)のロケットエンジン研究施設として開設された。その後1978年には、すぐ隣に旧NASDA(宇宙開発事業団)のロケットエンジン開発試験設備が開設。2003年の宇宙関連3機関の統合により、現在のJAXA角田宇宙センターとなった。

そうした経緯もあり、LE-5Bエンジン、LE-7Aエンジン、LE-9エンジンターボポンプなどの開発系試験設備は旧NASDAの東地区、ターボポンプや燃焼器など将来技術の研究系試験設備は旧NALの西地区に多い。今回の燃焼試験は、西地区にある高空性能試験設備(HATS)で実施された。

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    燃焼試験で使われた「HATS低圧室」。残念ながら内部の撮影はNGだった

HATSの「低圧室」は、直径3.8m、長さ4.5mの円筒状の容器で。この内部に試験用の燃焼器(燃焼室は長さ45cm、直径16~17cm程度)が設置されている。試験で注目するのは燃焼器側だけなので、スロート部までは作られているが、その先のノズルは付いていない。

なお低圧室という名称なのは、その名の通り、内部を100分の1気圧程度まで低くしたまま、燃焼試験ができるようになっているからだ。これは、第2段エンジンのように、気圧が低い高高度で使う場合の環境を模擬するためだが、今回はその必要が無いため、低圧室は密閉せず、1気圧環境で実施している。

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    低圧室は屋外に繋がっている。水蒸気を外側に勢いよく噴射することで、内部の空気を一緒に排出する仕組みだという

前述の通り、この設備では、壁面熱負荷特性まで取得することができる。燃焼器の壁面には、リング状の水路があり、これで冷却しているのだが、入口と出口で水温を計測、その差から、どのくらいの熱を受けたか分かるという仕組みだ。この水路は数cmの等間隔で設置されており、燃焼器全体のデータを得ることができる。

H3ロケットの第1段エンジンとなるLE-9では、新技術・3Dプリンタ製の噴射器を採用する。その試験も、この低圧室を使って行ったことがあるそうだ。

IST製の噴射器で初の燃焼試験を実施!

燃焼試験は、この日の15時半ころに実施。今回、見学はHATSの外側からだったため、内部の様子は全く分からなかったのだが、試験後、取材に応じた金井氏は、「狙った通りのデータが取れた」と報告。「今後もJAXAとの共創活動を活発にしていきたい」と期待を述べた。

燃焼試験の様子。ダメ元で外部から撮影したのだが、やはり動きは全く無かった。音だけを楽しんでください

今回の燃焼時間は7秒間だったのだが、その後、2月28日に実施した最後の燃焼試験では、シリーズ最長となる15秒間の燃焼を行ったという。ISTから燃焼試験の動画が公開されているので、それも掲載しておこう。

JAXA角田宇宙センターにて実施した燃焼試験の様子

2月28日に実施した燃焼試験。燃焼器の側面に付いている大量のホースが、温度の計測に使う冷却水だ

ZEROは、2023年の初打ち上げを目指し、現在開発中。引き続き、同社の動向には注目していきたいところだ。

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    角田宇宙センターには、一般向けの展示施設がある。せっかくなので見所を紹介しておこう

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    屋外にあるのはLE-7の実機。現行のLE-7Aの展示は割と良く見かけるが、LE-7はちょっと珍しい

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    圧巻はこれ。打ち上げに失敗したH-IIロケット8号機のLE-7エンジンを深海から回収したものだ

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    回収により、インデューサの疲労破壊が原因と判明。分析に使われたため、現物は残っていない

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    LE-7の液体水素ターボポンプ。スクリュー状のインデューサで吸い込み、インペラで昇圧する

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    LE-3の展示も。N-Iロケットの第2段で使われた初の国産液体エンジンで、燃料はヒドラジンだった