ISTの超小型ロケットの燃料はLNGに決定

インターステラテクノロジズ(IST)は3月5日、開発中の超小型衛星用ロケット「ZERO」の燃料として、メタンが主成分であるLNG(液化天然ガス)を選定したことを明らかにした。LNGを採用したエンジンとしては、過去に宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発した「LE-8」があるが、実際に軌道投入用のロケットで使われるのは、日本ではこれが初めて。

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    超小型衛星用ロケット「ZERO」のイメージCG (C)IST

これまで、同社が観測ロケット「MOMO」などで使ってきたのは、同じ炭化水素系のエタノールだった。エタノールは常温で液体。安価で取り扱いが簡単だというメリットがあったが、最大の課題は性能(比推力)だった。弾道飛行のMOMOならまだ問題となりにくいが、軌道投入となると、現実的に、より高性能な燃料が必要だった。

ロケットの液体燃料にはどんなものがあるのか

液体燃料としては、いくつかの選択肢が考えられる。まず日本のH-IIA/B、欧州のアリアン5、米国のスペースシャトルなどで採用されてきたのが液体水素だが、クリーンで高性能といった反面、極低温(-253℃)で扱いが難しく、比重が軽いのでタンクが巨大になるというデメリットがあった。そのため小型ロケットには不向きだ。

もう1つ代表的な液体燃料として、SpaceXのファルコン9やロシアのソユーズなどで使われているケロシンがある。ケロシンはエタノールと同様に、常温で液体。性能はそこそこだが、扱いやすいのがメリットだ。しかし、汚染の懸念があるほか、燃焼時に大量の二酸化炭素を放出するなど、環境面での課題もあった。

同社が採用を決めたLNGは、極低温(-162℃)にする必要があるものの、液体水素よりは沸点が高い。すでに酸化剤として極低温の液体酸素(-183℃)を使っているため、扱いとしてはあまり変わらず、大きな問題とはならない。そして何より、安価で性能が良いというのが最大のメリットだ。

ケロシンに比べれば、環境面の問題も小さい。同社がZEROを打ち上げる予定の北海道は、家畜の糞尿から、メタンを多く含むバイオガスを生産している。同社によれば、「将来的にロケット燃料を地産地消していくことも検討している」という。

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    ZERO用に実施した燃焼試験の様子 (C)JAXA/IST

そうしたメリットから、メタンは次世代のロケット燃料として世界的に注目されている。すでに、SpaceXの「Raptor」やBlue Originの「BE-4」など、ベンチャー各社が次世代エンジンを開発中であることからも、その注目度の高さが窺える。

JAXAの協力のもと、燃焼試験を実施

JAXA角田宇宙センターにて実施した燃焼試験

とはいえ、同社にとっては、新しい燃料への変更は大きなチャレンジだったが、「宇宙イノベーションパートナーシップ」(J-SPARC)で協力しているJAXAには、LNGに関しては長年の経験がある。これは開発において、大きな強みだ。

同社は、JAXA角田宇宙センターにおいて、1月下旬から2月末にかけ、メタン/液体酸素を使った燃焼試験を実施。同社が開発したピントル型インジェクタ(噴射器)の燃焼特性を取得したという。

また、ZEROで初めて搭載するターボポンプも、技術的な難易度が高いチャレンジである。こちらについては、室蘭工業大学との共同研究により、インデューサと呼ばれる主要部品の設計を行った。2019年9月~10月に大阪大学の試験設備を使い、このインデューサが設計通り機能することを確認したそうだ。

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    インデューサは、推進剤をポンプ内に吸い込むための部品 (C)IST

同社は、角田宇宙センターの助言も得ながら、ZERO用ターボポンプの基本設計を進めているところ。2021年には、ターボポンプと燃焼器の統合試験を実施する予定だ。