市場動向調査会社の米Gartnerが、2019年における電子機器メーカーの半導体消費に関する調査結果を発表した。それによると、Appleが過去3年間トップの座を維持していたSamsung Electronicsを抑えて首位に立ったという。
Appleは、2019年の世界の半導体消費全体の8.6%を占めたという。背景としては、Apple WatchやAirPodsなどのウェアラブル製品が好調であったことがあげられる。一方、2位のSamsungはメモリ価格の下落などの影響もあり、全体の8%を占めるに留まり、Appleと入れ替わりの2位となった。また、3位は米中貿易戦争にもかかわらず、ビジネスが好調に推移したHuaweiが2018年に続きランクインするなど、上位5社の顔触れは順位の差はあるものの、2018年と同じものとなっている。
また、いずれの企業においても全体的な半導体消費は減少しており、トップのAppleでさえ前年比12.7%減で、2位のSamsungは同21.4%減とそれよりも大きい下げ幅となった結果、2位転落となったと言える。
さらに上位10社でみても9社が2018年と同じ顔触れで、唯一の代わり映えは2018年11位であったHon Hai(鴻海精密工業)が2018年8位のKingston Technologyに代わって10位にランクインしたことである。加えて、この上位10社の中で、唯一Xiaomiだけが前年比で1.4%増と半導体消費を増加させ2018年の10位から8位にランクアップしている。
Gartnerアナリストでシニアプリンシパルの山地正恒氏は「2019年の上位5社は2018年と同じ顔ぶれだったが、いずれの企業においても半導体消費が減少した。主な要因はメモリ価格の下落である。2018年は、多くの電子機器メーカーにとってメモリ価格の高騰が大きな負担となり、上位5社のメモリチップの消費は半導体消費全体の45%を占めていたが2019年にはこうした状況が改善し、その割合は36%に減少した。その結果、主要メーカー各社は浮いた予算を活用し、より高性能なプロセッサやメモリを搭載して自社製品のパフォーマンスを向上させた」と説明している。
また、「世界の不確実な状況や景気後退も、2019年の半導体購入企業に大きな影響を及ぼしている。2019年には、米中貿易戦争、英国のEU離脱、日韓貿易紛争、香港民主化デモなど政治的な摩擦の拡大により、世界経済が低迷した。このような世界経済の環境悪化が、さまざまな電子機器の需要を引き下げる要因となった。2019年の電子機器全体の売り上げは、2018年比で0.2%減と推定している」ともしている。
なお、同氏は、上位2社の状況についても言及しており、Appleに関しては、「全体として半導体消費は前年比12.7%減となったが、ウェアラブル市場におけるApple WatchとAirPodsの売り上げが好調だったほか、スマートフォンでも新型iPhoneの1つ『iPhone 11 Pro』が3眼カメラの採用により半導体消費が増加。同社が新型iPhoneシリーズを値上げをせずに付加価値を提供できたのは、メモリ価格が下落した影響が大きいと思われる」と述べる一方で、2位のSamsungについては、「2019年の半導体消費は同21.4%減となったが、メモリ価格の下落だけが原因というわけではなく、主要な電子機器市場での苦戦も要因といえる。特にスマートフォン市場とSSD市場での苦戦が影響している」としている。