韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は6月19日、京畿道安山市のスマート製造革新センターで開かれた「製造業ルネッサンスビジョン」宣言式に出席し、「韓国政府は2030年に『製造業世界4強』を目標に製造業ルネッサンスビジョンを強力に推進する。(韓国は)半導体メモリ以降、新産業を1つも生み出せなかった。そのため韓国の製造業は活力が低下し、中国はそんな韓国を追い抜いた状況となっている。韓国の製造業は現在、飛躍か停滞かの重大な岐路に立っているが、過去の先行者を追いかけていく『追撃型産業戦略』はもはや韓国経済の解決策にはならない。『革新先導型産業構造』への転換が必要な時期にきている」と述べたと複数の韓国メディアが伝えている。

韓国政府は同日、「製造業ルネッサンスビジョン」を発表し、製造業ルネッサンスの4大推進戦略として「スマート化・親環境化・融合一体化による製造業の革新的な加速」、「未来に向けた新産業育成と既存主力産業の高付加価値化」、「産業エコシステム全般の革新」、「国内投資に対する支援の強化」などを提示し、2030年までに製造業における付加価値の比率を先進国水準である30%に高め、新産業・新品目の割合も16%から30%に拡大させるということを掲げた。この目標達成のために、大統領主宰の「官民合同製造業ルネッサンス戦略会議」を発足させるという。

韓国の半導体業界をけん引してきた2大半導体メモリ企業であるSamsung ElectronicsとSK Hynixは、2019年第1四半期の業績が大きく下落し、第2四半期も下落する見通し。2016年後半からおよそ2年ほど続いたメモリバブルがまるで嘘だったかのように、メモリビジネスの業績は悪化の一途をたどっており、市場調査会社や機関系の予測はことごとく下方修正を繰り返す状況に陥っている。

韓国政府は、自国の半導体産業が相変わらず半導体メモリ一色で、市場規模がメモリと比べて2倍以上大きい非メモリ分野にほとんど参入できていない現状について、「痛恨の自省が必要だ」(文大統領)として、4月に「非メモリ半導体ビジョン」を発表し、非メモリビジネスに対する支援政策を明らかにし、2030年までにファウンドリ事業でも(メモリ同様に)世界1位、ファブレス事業の世界市場シェア10%を達成するという目標を掲げている。この非メモリ半導体ビジョンは、今回発表された「製造業ルネッサンスビジョン」の中核をなすものとしてとらえられているが、韓国の産業界の一部は、ビジョン実現への掛け声だけで具体策に乏しいとして実現性を危ぶむ見方をしている。