独Infineon Technologiesは6月2日(現地時間)、米Cypress Semiconductorを90億ユーロで買収することを発表した(Infineonのプレスリリース、Cypressのプレスリリース)。
InfineonはCypressの発行株を一株当たり23.85ドルの現金で買収する。買収総額はおよそ90億ユーロ。この金額は、Cypressの4月15日から5月28日までの株価の、30日の移動平均の金額におよそ46%のプレミアムを載せたものとなる。買収の完了にあたっては、Cypressの株主および関係する政府機関による承認が必要であり、Infineonは買収完了を2019年末もしくは2020年初頭に予定している。ちなみにこの買収は敵対的なものではなく、Cypressの取締役会は今回の買収に賛成している。
元々Infineonはパワー半導体やセンサ、セキュリティチップなどに、CypressはMCUやWi-Fi/BT/USBなどのコネクティビティおよNORフラッシュなどに強みを持っており、ほとんど事業分野の重複がない(Photo01)。
そこで合併することで、売り上げの増加と経費削減(2022年度におよそ180万ユーロ)が見込める、としている。加えるなら、Infineonはこれまでヨーロッパを中心に営業しており、アメリカや日本を含むアジアでのプレセンスは低かったが、Cypressを買収することでこれまで手薄だった地域に強力なプレセンスを確保できると共に、新しい分野にも進出できるとしている。
合併後のInfineonはこんな規模の企業になる、という予測がPhoto02。
特にInfineonからすると、Cypressの持つMCUやソフトウェアなどの資産は、特に自動車業界などで強力なコンビネーションを構築できると考えている様だ(Photo03)。これにより包括的なソリューションが自動車向けに提供できる(Photo04)とする。
地域別に言えば、特に日本がほぼ倍の売り上げになる(Photo05)のが特徴で、これは大きなポイントになるとしている。
またこの買収で、さまざまな分野で同社がかなり良い位置に来るという点も見逃せないとしている(Photo06)。
総額で1兆円を超える大型買収ではあるが、これがうまく行くかどうかはCypressの株主の承認はともかく、関連機関(特に中国)の承認が下りるかどうかというあたりかと思われる。そういう意味でも引き続き動向を注視し続ける必要があるだろう。