量子科学技術研究開発機構(QST) 核融合エネルギー部門那珂核融合研究所で建設中のトカマク型核融合実験器「JT-60SA」。トロイダル磁場コイルと平衝磁場コイルのインストールに続いて、もっとも重要となる中央ソレノイドのインストールが今回、実施された。その様子が報道向けに公開されたので、本稿ではその様子をお伝えしていく。
フランスで建設中のITER(国際熱核融合実験炉:イーター)よりも先行して実験に入り、サテライトとして運用されるJT-60SAは、上記のとおり、トロイダル磁場コイルと平衝磁場コイルのインストールを完了している。トカマク型核融合において必要となる最後の超伝導コイルが、今回の中心ソレノイドだ。中心ソレノイドの実験時の役割は、電磁誘導の原理でプラズマに電流を発生させること。この仕組み自体は無接点充電などでとても身近なのだが、JT-60SA用の中央ソレノイドは、直径約2m、高さ約7m、重量約100t。2019年時点で世界最大クラスの超伝導コイルとなる。
中心ソレノイドは、平衝磁場コイルも担当した三菱電機製で、約8年をかけて完成したという。4つのモジュールからなり、支持体末端部まで含めると約7.7mとなる。超伝導素材にはニオブ錫を採用し、20kAで8.9Tの強磁場を発生させることが可能だ。中心ソレノイド導体は27.9mm×27.9mm。断面図サンプルの実機公開はなかったが、平衝磁場コイル導体と似た形状のようだ。
中心ソレノイドのインストールは、ハンガーからキャッチアップするところから公開された。黄色いフレーム内に中心ソレノイドがあり、中からゆっくりと本体が出現する様子は、大変カッコイイもので、だいたいの報道関係者が口々に同様のことを漏らしていた。所長を筆頭に、珂核融合研究所職員も本体を見るのは初めてであったようで、興奮している様子が明瞭だった。また中心ソレノイドのインストールはマイルストーンであり、長く待っていた作業といえるだろう。
インストール先は、もちろんドーナツ型の真空容器の中央の空洞部だ。真空容器側の空洞部は直径約2.03m。中心ソレノイドの直径は約2mと記してるが、両端に約15mmずつの隙間があるだけのシビアなインストールになる。そのため、JT-60SA頂上部には熟練技術者8人が配置され、それぞれ位置を確認したり、クレーン担当者に指示を出したり、ときには手押しをしたりと慎重な作業が続いた。
JT-60SAは2020年初頭に完成予定。同年9月にファーストプラズマを予定している。中心ソレノイドのインストール以降は、サーマルシールドやクライオスタッドなどの取り付けが実施され、順次、各コイルや真空容器は隠されていく。折りを見て撮影にいく予定なので、完成前あたりにレポートできればと思う。なお、同研の一般公開は例年通りであれば10月付近だ。