2018年4月20日、茨城県にある量子科学技術研究開発機構(QST)那珂核融合研究所がプレス向けに見学会を開催した。公開されたのは那珂核融合研究所で建造中の核融合試験装置(トカマク型)で、前身であるJT-60で使用された機器を一部流用しつつ、超伝導ベースにアップデートしたものになる。完成予定は2019年度内。

  • 建造中のJT-60SA

    建造中のJT-60SA。Japan Tokamak 60 Super Advanceの略。60は真空容器内のプラズマの体積が60m3の意味

今回の公開の目玉はトロイダル磁場コイルのインストール。トカマク型は縦方向と横方向の磁場コイルでねじれた磁場線を構築してプラズマを制御する仕様であり、JT-60SAは18基のトロイダル磁場コイルと6基のポロイダル磁場コイルを採用している。すでに17基はインストール済みであり、最後の1ピースを真空容器にある20°の開口部に組み付けるまでが公開された。なおポロイダル磁場コイル3基はすでに真空容器外殻に取り付け済みだ。

  • トカマク型の仕様を示すスライド

    トカマク型の仕様を示すスライド

  • 並行して国際熱核実験炉(ITER)計画も進行中

    並行して国際熱核実験炉(ITER)計画も進行中だ。JT-60SAはそのサポートおよび、原型炉に向けてのデータ収集も行なう

  • 国内における核融合エネルギー関連のアプローチを示すスライド

    国内における核融合エネルギー関連のアプローチを示すスライド

  • 実験開始は2020年を目標としている

    実験開始は2020年を目標としている。今後はポロイダル磁場コイルやクライオスタットの取り付けと進む見込み

トロイダル磁場コイルは、高さ7m、重量20t。報道陣公開前には直立させた状態になっていた。トロイダル磁場コイルは総計20基が製造されており、フランスとイタリアが半数ずつを担当している。また、20基のうち2基はスペア。ちなみに最後の2基はフランスからアントノフによって空輸され、その様子はニコニコ生放送にて中継された。現在はタイムシフトで視聴可能だ

  • トロイダル磁場コイル

    トロイダル磁場コイル。形状からDコイルとも呼ばれる。最終ピースであるため、真空容器とサーマルシールドも取り付けられた状態だった。内側からトロイダル磁場コイル、真空容器、サーマルシールドの順

  • 今回のトロイダル磁場コイルの名称はHELENA

    それぞれ女性名が命名されており、作業員の家族から取られたものもあるそうだ。今回のトロイダル磁場コイルはHELENA。なおスペア2基の名称は不明で、掲示もされていなかった

  • これまでに17基のトロイダル磁場コイルがインストールされている

    支持体で少しわかりにくいが、TOSHIBA横断幕の下に見えるのが開口部。この20°の開口部から、これまでに17基のトロイダル磁場コイルがインストールされている

  • リフト前の最終点検の様子

    リフト前の最終点検の様子

  • インストール済みの部分はサーマルシールドに覆われた状態

    インストール済みの部分はサーマルシールドに覆われた状態。大型のビスが目を引く

  • ゆっくりと上昇し、真空容器前にまで到着したところ

    ゆっくりと上昇し、真空容器前にまで到着したところ

  • 真空容器直上にあるクレーンは、360°旋回する

    ちなみに真空容器直上にあるクレーンは、360°旋回する仕様のもの

  • 今回の着地点である開口部

    今回の着地点である開口部

  • 作業はスムーズに進行

    作業はスムーズに進行

  • 設置される直前の様子

    設置される直前の様子。このあと固定され、開口部が閉じられることになる

今回は1つの節目であるトロイダル磁場コイルの最終インストールということで報道陣向けの見学会が開催された。今後も同研究所は重要なタイミングでの見学会を開催する予定とのことだ。ステップでいけば、残り3基のポロイダル磁場コイルの取り付けのときと思われる。そのとき、またレポートをお送りできればと思っている。