ショットは4月23日、2019年4月24日から26日までパシフィコ横浜で開催される光技術総合展示会「OPIE’19」の「宇宙・天文光学EXPO」に出展するのに併せ、メディア説明会を開催。同社の超低膨張ガラスセラミック「ZERODUR」を本格的に日本の宇宙産業向けに展開していくことを明らかにした。

ZERODURは、正の熱膨張の性質を持つガラスと負の熱膨張の性質を持つ結晶を、高度に組み合わせることで低い熱膨張係数(CTE)を実現したガラスセラミック製品で、温度変化による膨張がほぼ起こらないという特徴から、さまざまな分野での活用が進んでいる。

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    ZERODURの熱膨張係数の比較 (出所:ショット提供資料)

特に宇宙関連では、欧州を中心とした大口径の反射望遠鏡では反射鏡の基板として活用されてきており、ヨーロッパ南天天文台(ESO)がチリのセロ・アマソネス山に建設中の超大型望遠鏡(Extremely Large Telescope:ELT)の反射鏡基板として主鏡(M1)を含む5枚中4枚に採用されるなど、多くの実績を有している。

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  • ELTの概要と、ZERODURが採用された4枚の鏡の概要 (出所:ショット提供資料)

日本では半導体向け露光装置やFPD向け露光装置を中心に展開してきたが、今回のような展示会への出展を通じ、日本の宇宙産業での活用に向けたアピールをすることで、大型望遠鏡などへの採用を目指すとしている。

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  • 超軽量ZEROCUR反射鏡基板の縮小モデル。実物は直径1200mmで、重量は従来比90%減となる45kgを実現したという。正三角形の格子状に加工されたアイソグリッド構造を採用することで、精度と軽量化の両方を実現したという

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    正三角形の格子状に加工されたアイソグリッド構造を採用した軽量反射鏡基板のサンプルの1部

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    ELTにも採用されているセグメント鏡向けZERODUR。ELTの主鏡には798枚+予備133枚が用いられる

また、観測衛星用に軽量化を図ることも可能となってきているとのことで、地上だけではなく、宇宙での活用も目指していくとする。そのため、やはり国立天文台や宇宙航空研究開発機構(JAXA)といったところにアピールしていくことになるが、その一方で、昨今は複数の超小型衛星/小型衛星を用いた民間企業による衛星コンステレーションによる観測などが注目を集めていることから、より幅広くアピールを行い、そういう企業からの引き合いも目指していければとしている。

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    ZERODURの宇宙での活用イメージ (出所:ショット提供資料)