英IHS Markitは、先般発表した2018年第4四半期の世界半導体企業ランキングトップ10に続いて、2018年通年のランキングトップ10(最終確定版)を明らかにした。
2018年のトップ10社の順位は上位7社までは2017年の順位から変動はない。また、8位も東芝が東芝メモリに変更されただけで実質の変動はない。変化があったのは9位と10位で2017年10位のNVIDIAが9位に、同11位のSTMicroelectronicsが10位にそれぞれランクアップ。変わって2017年9位であったNXP Semiconductorsがランク外へと消えた。ちなみに2019年1月に同じく市場調査会社であるGartnerが発表した2018年通年の半導体企業ランキングトップ10(暫定版)でも7位までは今回のIHSの調査結果と同じだが、あちらでは8位がWestern Digital、9位にSTMicroelectronics、そして10位がNXPとなっていた。10位前後の企業は、売上高がいずれも90~100億ドル程度の僅差でつばぜり合いをしている状態にあり、為替レートや集計方法などにより、順位が大きく変わる状態にあることから、こうした結果となったといえる。
トップ10各社の動向
2017年に続き2018年もトップの座を守り抜いたのはSamsung Electronics。しかし、メモリバブルが崩壊した2018年第4四半期(10~12月期)に限ればIntelが首位を奪還しており、メモリ市場の軟化が続く2019年は、Intelがこのままトップを奪還するとの見方が有力である。
Samsungは、売り上げより利益重視に方針を変更したこともあり、売上高の伸びは、競合のSK HynixやMicron Technologyと比べて少なかったものの、競合に比べてはるかに多くの利益を確保した模様である。
2位のIntelは、10nmプロセスへの移行がうまくいかず、14nmプロセス採用のMPUが出荷不足を招くという事態に陥っている。そのため、PCメーカーも計画通りに出荷できず、PC販売価格も値上がり傾向となっている。10nmで製造される予定の新アーキテクチャ採用の「Ice Lake」(開発コード名)は、当初は2017年末の出荷スケジュールであったが、2018年へと延期され、最終的には2019年末まで遅れるとしていることもあり、トップ10の売上高成長率平均(17.1%)を下回る伸び率となった。
3位のSK Hynixは、トップ10社の中でもっとも高い成長率(前年比36.5%)を示した。Samsungに少しでも供給量で追い付こうと再増産体制を敷いたために売り上げが拡大した模様である。また、4位のMicronもメモリ価格が高騰したおかげで売上高が3割ほど増加した。
5位Broadcomと6位Qualcommは毎年、通信用半導体分野でデッドヒートを繰り広げているが、2018年はトップ10社の中でこの2社だけがマイナス成長となった。スマートフォン向けやワイヤレス通信向けビジネスが業績不振であったためである。
7位は、半導体業界の老舗中の老舗でアナログ半導体のトップメーカーTexas Instruments。また、8位の東芝メモリの成長率は18.7%と、NAND専業のため、DRAMの価格高騰で業績を大きく伸ばしたほかのメモリメーカーよりも低い成長率となった。さらに9位のNVIDIAは、GPUの販路をAIやデータセンタ、自動運転などの分野へと広げることで、同21%ほどの成長を遂げたほか、10位のSTMicroelectronicsも得意の車載半導体のほか、イメージセンサおよびパワーディスクリート事業で業績を伸ばし、同16%ほどの伸びを見せた。
世界の半導体市場に占める日本企業のシェアは9%
IHSの集計によると、2018年の世界の半導体市場規模は、前年比12.1%増の4819.5億ドルとなっている。同社による、同年の日本半導体企業の売上高総額が442億ドルであることを考えると、日本の半導体企業の合計シェアは約9.2%と計算される。1980年代後半、世界市場における日本勢のシェアは5割を超えるほどであったが、30年かけてついに10%を切るところまで来てしまった。それでも、一時は7%程度にまで下落したことを考えると持ち直した感があるが、東芝メモリが奮闘して歯止めをかけている状況である。そのためメモリ不況といわれる2019年、東芝メモリも設備投資を抑制、さらに国内9工場一時閉鎖や人員削減を計画しているルネサス エレクトロニクスが業績を悪化させることが予想されることから、日本勢のシェアはこれまで以上に下落する可能性が高いといえるだろう。