次はクレーターの生成に挑戦
気になるのは今後の運用計画であるが、1回目のタッチダウンが成功したことを受け、プロジェクトチーム内で検討した結果、次は衝突装置(SCI)による人工クレーターの形成実験を行うことに決まった。タッチダウンの2回目を行うかどうかはSCI運用後に判断するが、3回目については行わない可能性が高いという。
当初、"運用例"として説明されていたのは、2回のタッチダウンのあとにSCIを使い、そこで作られたクレーターに3回目のタッチダウンを行う、というものだった。
しかし、リュウグウ表面が予想以上に岩だらけだったため、1回目のタッチダウンは4カ月遅れた。太陽に近づき、表面が熱くなる7月以降は接近が難しく、時間的にも2回が限度というのは現実的な判断だろう。1回目のタッチダウンで想定通りの量が取れたのであれば、リスクを増やしてまで3回目を狙う必要も無い。
また、1回目のタッチダウンの後、底面側の光学カメラの受光量が低下したという事情も考慮した。通常の運用には問題無いものの、タッチダウン運用で使うにはより慎重な調査が必要で、結論が出るまでには時間を要する。まずは、その影響が無いSCI運用を先にやってしまおう、というわけだ。
2回目のタッチダウンの着陸候補地点として現在考えられているのは、赤道近くの「S01」と名付けられた領域だ。1回目タッチダウンの際は、100m四方の領域を前提としてL08、L07、M04を候補としたが、今回、誤差1mでの着陸に成功したため、半径10m程度の狭い領域で改めて探索を行ったという。
SCIによる人工クレーターも、このS01を含んだ領域に作成する計画。SCIの命中精度は着陸ほど高くは無く、100m単位でズレる可能性がある。実際にどこにタッチダウンするかは、クレーターができた場所を見てから判断することになるが、そのままS01に着陸する可能性もあるし、もっとクレーターの近くに着陸することも有り得る。
今後、まずS01近辺をより詳しく調べるため、3月6日~8日にかけ降下運用(DO-S01)を実施。高度20mくらいまで降下して、接近観測を行う。そして同20日~22日には降下運用(CRA1)を行い、クレーター形成地を観測。4月1日の週にSCI運用を行ってクレーターを作り、4月22日の週に再度降下運用(CRA2)を行い、地形がどう変わったか調べる。
クレーター形成後、舞い上がった物質が2週間くらいは浮遊していると考えられる。それから観測を行い、着陸できるかどうか判断する時間も必要になるため、2回目のタッチダウンは5月以降になる見込み。7月以降は着陸が難しいため、残っている「MINERVA-II2」の分離運用を行い、11月~12月にリュウグウを出発する予定だ。