ファウンドリとして日本の顧客獲得を目論むSamsung
去る9月4日、韓国Samsung Electronicsは都内で通算2回目となる「SFF(Samsung Foundry Forum)2018 Japan」を開催した(Photo01)。
残念ながらForumそのものは写真撮影禁止であったのだが、このSFF 2018に先立って報道関係者向けに説明会が開催されたので、こちらの内容を中心に、SFF 2018で明らかにされた情報などをいくつか加味しつつレポートしたい(Photo02)。
今年の同社の合言葉は「To be the most trusted Foundry」である(Photo03)。同社は2017年からPure-play Foundryとして改めて組織を作り直した形になり、今年で2年目となる。初年度となるSFF 2017では、とりあえずPure-playとしてスタートしたという事を顧客にアピールする部分がメインだったように思えるが、2年目となる今年はもっと明確に、日本の顧客をさらに増やしていきたいという希望が当然あり、それもあってもう少し踏み込んだ内容の説明となった。
GAAの採用は4nmから3nm以降に移行
まずロードマップのUpdateについて。ロードマップそのものは後でまとめ直すとして、大きく言えば
- 8nmに新しく8LPUが加わった
- GAA(Gate All Around)は3nmに移動した
の2点が従来からの変更となる。8LPUは8LPPの改良版で、8LPPと比較して性能改善と省電力化が可能(ロジック密度は変わらない模様)なもの。一方GAAであるが、構造は以前の記事で説明したMBCFET(Multi Bridge Channel FET)ベースながら、「当初4nmで必要なパフォーマンスはGAAでないと実現できないと考えていたが、その後の開発でFinFET構造でもパフォーマンス改善が見込めるめどが立った」ということで、GAAは3nm以降に移行したとしている。
すでに目標スループットを達成した7nm EUV
そして説明の中心は、7nmのEUVに関連する話題となった。同社は7nm世代ではArF+液浸のマルチパターニングは採用せず(これは8nm世代の方式となる)、7nmは完全にEUVとなる。すでにスループットは目標値を達成しているとしており、2019年8月には目標値の1.5倍近いスループットまで達成できると考えているようだ。
またSamsung独自に、EUV向けのマスクの診断装置を開発、EUVで露光を行う前にマスクの欠陥の判定や修正などを行えるようにしたことで、マスクに関連する歩留まり低下を防ぐといった対策も行っているという話であった。
SFF 2018のセッションでは、これに加えて2020年には次世代EUV露光装置「NXE:3400C」を導入してさらにスループットを増やすという話も出ていた。これまでASMLは現行の最新EUV「NXE:3400B」の後継として「NXE:3450C」という名称を用いてきた記憶がある。こちらは光源の強化(出力350W)などさまざまな改良を施したものだったはずだが、ASML側で名前を変更したのか、それともNXE:3450Cの一部機能だけを盛り込んだ中間バージョンなのかについては、今回は明らかにされなかった。話を戻すと、現在はこのEUVは同社のFab S3に設置されているが、このFab S3の横に、新たにEUV専用のラインを増設するとしている(Photo06)。
ちなみに質疑応答の中で"この7nmのTarget Applicationは?"という質問に対して「Mobile SoCやHPC、AI、自動運転などが考えられる」としたうえで、「HPCにはGPUも含まれる」と補足があったため、"そのGPUはNVIDIAの事か?"と確認したところ、「我々はファウンドリビジネスを行っているわけなので、我々の口から顧客の名前を明かすことはできない(笑)」という、政治的に正しい答えが返ってきた。実際、NVIDIAのTuringアーキテクチャが12nmで製造されるというのは、TSMCの7nmが使えなかったのか、使わなかったのかは判らないが、このままだと当然競合に差をつけられることになる。NVIDIAとしても当然、最先端プロセスを使いたいわけで、もしSamsungの7nmを使う決断をしたとすれば、Turingが12nmなのも納得できる話ではある。
さてSamsungは7nm EUVにだけ注力している訳ではなく、Pure-play Foundryとして幅広いラインアップを用意して顧客のニーズを満たす必要がある。具体的にはCMOSセンサやディスプレイドライバ、PMICに加え、MCUやRF回り。さらにパワー半導体やMEMSなどが挙げられる(Photo07)。こうした「Specialty Technology」の量産には200mm(8インチ)ウェハを使うことが普通なこともあり、8インチの量産Fabの数そのものは増やさないものの、生産能力は拡充していくという話で、2017年には190KWafer/Monthだった生産能力を、2021年には350KWafer/Monthまで増強するという数字がSFF 2018の中で語られており、かなり力をいれている事が見て取れる。