スタンフォード大学の研究チームは、液体金属の状態のナトリウム-カリウム(Na-K)合金を用いる新型のフロー電池を開発したと発表した。動作時に電解液を高温でポンプ循環させる必要がある従来のフロー電池と比べると、低コストな材料が使えて動作温度も常温にできるといった長所があるという。研究論文は「Joule」に掲載された。

  • Na-K液体合金を用いたフロー電池のデバイス構造

    Na-K液体合金を用いたフロー電池のデバイス構造 (出所:スタンフォード大学)

フロー電池は、2種類の電解液をポンプで循環させ、イオン交換膜によるイオンの移動で電池として機能するもの。大型のタンクを使って大量の電解液を循環させることで大容量の蓄電が可能であるため、太陽光発電や風力発電などの出力調整用電力貯蔵設備として期待されている。

従来のフロー電池の課題としては、動作温度が高温になること、毒性の強い化学物質が使われることなどがあった。今回の研究では、こうした問題を解消するために常温で液体金属となるNa-K合金を使用したフロー電池の開発をめざした。

今回のフロー電池では、Na-K合金を負極側の電解液として用いている。理論的には、Na-K合金を使うことで、他の候補材料と比べて質量あたり10倍以上のエネルギーが利用できるようになると研究チームは説明している。

正極側の電解液と負極側の電解液を分離しつつ電気の流れを作り出すため、カリウムと酸化アルミニウム(βアルミナ)からなるセラミック膜が使用されているのも今回のフロー電池の特徴である。

これらの材料を使うことにより、従来のフロー電池と比べて電池の最大電圧が2倍以上高くなるという。電圧を高く取れるということは、電池のサイズあたりの容量を大きくできるので、電池の製造コストも低くできるということを意味している。試作品は数千時間の運転での安定性も確認されている。

論文によると、開路電圧3.1~3.4Vで動作させたフロー電池において、動作温度22℃で最大パワー密度65mW/ cm2、動作温度57℃で100mW/cm2超であった。

セラミック膜はナトリウムが電池の正極側に移動することを防ぐ役目を担っているが、通常は200℃超の高温で使用したときに最も効率が良くなる。今回の研究では、室温条件で電池を動作させるために、セラミック膜を薄膜化することを試みた。これによって電池の出力が向上したという。

正極側の電解液としては4種類の液体を実験で試した。その結果、水系溶液を使った場合には膜が急速に劣化してしまうという問題があったという。研究チームは、非水系溶液のほうが電池の性能が上がる可能性があると話している。