トヨタ自動車の子会社で米国において人工知能(AI)などの研究開発を行うToyota Research Institute(TRI)が設立したベンチャーキャピタルファンド「Toyota AI Ventures」(TAIV)は7月12日、TRIとベンチャー企業支援に関するグローバルプログラム「Call for Innovation」を立ち上げたと発表した。

新プログラムは、重要な技術課題を特定し、ベンチャー企業によるソリューションを募集することを通じてイノベーション促進を目指すものとなり、募集する技術領域において有望なベンチャー企業に対して、50万ドルから200万ドルをTAIVから投資するほか、TRIとの実証プロジェクトの実施を検討していく。

第1弾はTRIのロボティクスチームが参画し、家庭内や周辺で人々を助ける支援ロボットに使われる「モバイルマニピュレーション(日常の不特定かつ多様な環境下においても、必要に応じて人とも協調しながら、ロボットが複雑な操作やタスクを行うこと)技術の向上」を募集領域とする。

第1弾では、ハードウェア・ソフトウェアの技術を持つ世界中のベンチャー企業を対象として、(1)これまでの資金調達額が300万ドル未満であること、(2)試作モデルを通じてソリューションのデモを行えること、(3)顧客への価値を提供する強固なビジネスモデルを有していること、の3つの要件を満たすことを条件としている。

モバイルマニピュレーション技術におけるハードウェアを通じたソリューションの例としては、安全で軽量なロボットアーム、家事タスクを数多くこなせるグリップ部、触覚センサー技術など。

ソフトウェアにおいては、ハードウェアの認識レベルや忠実性の低さを補う方法、データから学んだり、データをタグ付けしたりするアルゴリズム、シミュレーションから得る学びを適用する方法などとなる。

TAIVは、同日から10月末にかけて今回の応募を受け付け、提出され次第、随時、応募内容を評価し、応募するベンチャー企業の組織、技術、ビジネスモデル、市場化戦略などの観点に基づく評価、および通常のデューデリジェンスを行った後に、投資決定を行う。同プログラムへの応募はTAIVのウェブサイトから申し込める。

将来的には、認識技術、機械学習、シミュレーションなど、ロボティクスや自動運転におけるTRIの研究開発の他の領域を対象として、技術課題を選定することも検討していく。

なお、TAIVはAI、データ・クラウド、自動運転モビリティ、ロボティクスの分野における設立間もない有望なベンチャー企業への投資を行うべく、2017年に1億ドルのファンドとして設立されて以降、投資先を拡充している。

これまで投資を行ってきた10のベンチャー企業に加え、このほど11社目の投資先として、ロボティクスとAIの領域に取り組み、介護・ヘルスケア領域に革新をもたらすコンパニオンロボットの開発を手がける米Embodied.meへの投資を実施している。