既報のように、インターステラテクノロジズ(IST)は4月29日、予定していた観測ロケット「MOMO2号機」の打ち上げを再度延期した。原因は機体側の不具合。改修後、翌日以降の打ち上げを目指すが、今回の実験の予備日は5月5日までとなっており、この日までには打ち上げる必要がある。
同社は5:00~8:00の打ち上げを目指し、前日から準備作業を進めてきたが、機体搭載の空圧バルブを駆動するための窒素ガスの圧力が異常値を示したため、朝の打ち上げを中止。昼以降のウィンドウでの打ち上げを目指し、原因を調べていたものの、調査に時間がかかる見通しとなり、7時半過ぎに、翌日以降への延期を発表した。
同社によれば、機体を立てた状態のまま再点検を行ったところ、窒素ガスのリークが確認できたという。MOMO2号機では、エタノールや液体酸素などの供給を制御する空圧バルブに、窒素ガスを使用しており、窒素タンクを機首部分に搭載している。リークで圧力が下がれば、バルブの開閉が正常に行えなくなる恐れがある。
同日15時から開催された記者会見で、同社の稲川貴大・代表取締役社長が調査結果について説明。それによると、レギュレータ(調圧弁)まわりの設計ミスが原因だという。
これは、初号機から変更を行っていた場所だった。初号機では、窒素ガスをロール制御とバルブ駆動に使用。それぞれで必要な圧力が異なるため、レギュレータを2つ直列につなぎ、ガス圧を2段階に下げて、それぞれで用いていた。
しかし2号機では、ロール制御が別方式になった結果、窒素ガスはバルブ駆動のみに使用。2種類のガス圧がいらなくなったので、レギュレータの1つは廃止し、1つだけになっていた。
短時間の会見だったため、詳細までは確認できなかったのだが、今回の不具合は、レギュレータが1つになった結果、ある特定の条件下で起きるようになったものだという。窒素ガスを開閉する電磁バルブの安全弁が作動し、そこからリークした模様だ。
ちなみに事前に実施したリハーサルでは、やはり窒素ガスのリークは起きていたのだが、配管からのリークも同時に起こっていたため、その対処のみを実施、今回の不具合を見逃してしまった。配管の改修後、再度リークのチェックをしたが、このときは機体を横に寝かしており、この条件下だとリークは起きなかった。
対策として、レギュレータの構成を実績のある初号機に戻す。レギュレータを1つ追加し、配管をつなぎ直すことになるが、部品は初号機の予備品が残っているため、改修にそれほど時間は要さない見込み。そのため、次の打ち上げは、翌日(4月30日)の朝のウィンドウ(5:00~8:00)を目指し、準備を進める。
昼以降のウィンドウもあるようだが、朝のウィンドウを逃した場合は、随時発表するとしている。なお、改修後に試験を行うため、その結果次第では、4~5月の打ち上げは諦め、月単位で延期する可能性もあるとのこと。
稲川社長は、「この1か月ずっと不具合対応をやってきて、もう万全だと思っていたが、隠れていたミスがあった。ロケットは難しいと日々思っているが、改めて難しいことが分かった」と述べる。ただ、「我々は観測ロケットの商業化が目的。いつかは出る不具合だったので、早めに見つかったのは良かった」と、前向きに捉えた。
なお、打ち上げの見学場所であるが、有料見学会場の「SKY HILLS」はもともと今日までの予定だったため、30日以降の解放は無い。入場できるのはメディアや関係者などに限られるため注意して欲しい。
一方、一般向けのパブリックビューイング会場だった大樹町多目的航空公園は、引き続き利用できる。開場時間は午前4時から午後7時まで。入場は無料だ。ただ、イベントとしては今日で終了するため、30日以降は大型ディスプレイの設置が無い。射点を直接見ることはできないので注意して欲しい。