高エネルギー加速器研究機構(KEK)は4月26日、2018年3月19日よりフェーズ2運転を開始させたSuperKEKB加速器にて、4月26日午前0時38分に初めての電子・陽電子の衝突を観測することに成功したと発表した。

SuperKEKBは、衝突点に設置された新生Belle II 測定器の中心部で、電子と陽電子を衝突させ、対生成されるB中間子・反B中間子、D中間子・反D中間子、τ+・τ-などの崩壊を観測するプロジェクト。KEKがホストし、25カ国・地域の研究者750人以上で組織するBelle II 実験グループで運営されており、観測開始の初期(25日午後10時過ぎ)は電子・陽電子がビームガスに当たって起きるイベントが多く、反応の様子を表示するコンピュータ画像「イベントディスプレイ」で初衝突を確認できなかったものの、2時間半後の26日午前0時38分に多数の粒子が飛び散る反応を確認したことから、衝突によりハドロンが生成・崩壊する事象である「ハドロン事象が起きたと見られる」との判断に至ったとするほか、それと前後し、電子、陽電子が衝突点でぶつかり、ほぼ反対方向に飛び散る散乱「Bhabha散乱」と見られる反応の観測にも成功したという。

なお実験グループは今後、2018年7月までフェーズ2運転を継続し、SuperKEKB加速器の調整とBelle II 測定器でのデータ収集を続ける予定としている。また、その間も電子・陽電子両ビームの調整を続けることで、順調に進めばフェーズ2運転中にもKEKB加速器の時代に記録したルミノシティの世界記録(2.1×1034cm-2s-1)に迫る可能性があるともしているほか、夏から秋にかけ、Belle II 測定器の中心部に搭載中のビームバックグラウンド測定装置(BEAST)から、本番用の崩壊点位置検出器(VXD)への交換作業などを行うことで、2019年2月から予定されているフェーズ3運転(本番の物理ラン)に備える計画としており、将来的な、標準理論では説明がつかない新しい物理現象の探索につなげていきたいとしている。

  • Belle II 測定器の断面イメージ

    Belle II 測定器の断面イメージ (出所:KEK Webサイト)