半導体市場調査企業である米IC Insightsは、半導体の生産能力に関する調査報告書「Global Wafer Capacity 2018-2022」の中で、2017年の世界の半導体生産能力は、前年比で7%の増加になったことを明らかにした。

ただし、メモリ分野では需要に追いついていなかったとしながらも、今後数年にわたってSamsung ElectronicsやSK Hynix、Micron Technology、Intel、東芝/Western Digital、中国XMC(武漢新芯集成電路製造)/YMTC(清華紫光集団傘下の長江存儲科技)などのフラッシュメモリメーカーが3次元(3D)NANDの生産能力を向上させていく計画を有しているほか、SamsungとSK Hynixについては2018年ならびに2019年にかけてDRAMの生産能力も増強させる予定であり、2018年および2019年の生産能力は引き続き成長が続き、ともに前年比8%増の伸びを示すものと予想している。

  • 世界の年間半導体生産能力(200mmウェハ換算)の推移

    図1 世界の年間半導体生産能力(200mmウェハ換算)の推移(1998年~2017年実績、2018~2019年予測)。折れ線は、前年比成長率 (出所:IC Insights)

リーマンショック以降の半導体業界のウェハ生産能力は、それ以前に見られたような大きな乱高下をすることなく、一定の範囲で緩やかだが拡充が続いている。これについてIC Insightsでは、2010年代に入って、半導体メーカーが需要と供給を一致させようと努力してきた結果であると見ている。しかし、半導体企業が、新しい工場の建設を決めてから、実際に大量生産をはじめるまでには年単位の時間を要するため、何年も先の需要を予測することは依然として難しいことには変わりがない。

また、多くの半導体企業、特にDRAMやNANDを手がけるメモリベンダは、ラインの稼働率を高めることで増産に対応してきたが、それもこの数年で限界を迎えつつあるため、既存ファブの拡張や新規のファブ建設を積極的に行うタイミングに入ったともいえる。

なお、2019年に稼働する予定の新規ファブ群が計画通りに稼働し、予定の生産能力が達成されれば、同年に追加される生産能力は、過去にもっとも高い生産能力の伸びを見せた2007年(1880万枚)に近づく可能性が高い。同報告書では、2019年の年間生産能力の追加分を1810万枚と予測しているが、この値は、中国の半導体企業が建設を進めている(計画している)大規模なDRAMおよびNANDファブの一部が、公表しているほどには稼働しないと仮定した結果だという。また、IC Insightsでは、これらの中国勢の工場の建設がおそらく予定より遅れるとの見方も示している。

  • 世界半導体全体のウェハ生産能力(200mmウェハ換算)の前年比増減数の推移

    図2 世界半導体全体のウェハ生産能力(200mmウェハ換算)の前年比増減数の推移。2018年と2019年は予測(単位:百万枚/年) (出所:IC Insights)