TrendForceの半導体メモリ調査部門であるDRAMeXchangeによると、市場の需要を刺激するために、2017年第4四半期に大手スマートフォンメーカーがフルスクリーンのモデルを投入したものの、市場は飽和気味となっており、消費者の購買意欲は期待したほど向上しなかったという。

こうした動きもあり、過去1年以上にわたって続いてきたモバイルDRAMの高騰も含め、主要スマートフォンメーカー各社は、自社の利益が圧迫されることとなっていることを受け、生産計画の見直しをはかっており、2017年第4四半期の半ば以降、部材の補充を先延ばす動きを見せているとする。そのため、モバイルDRAMをはじめとする主要なコンポーネントにおいて、過剰在庫の状態が発生しているという。例年、オフシーズンとなり、スマートフォンの需要が減少する第1四半期でも、モバイルDRAMの大口契約価格の上昇率は5%程度と事前に予想がされていたが、こうした動きの結果、上昇率は3%程度にとどまる見通しだという。

ただしDRAMeXchangeでは、新しいAndroidのフラッグシップモデルの発売を機に、第2四半期には需要が回復すると見ており、同四半期のNAND価格は下落するものの、モバイルDRAM契約価格は前四半期と同等かわずかに上昇するものと予測している。

中国政府とSamsungがDRAM価格安定に向けて覚書を締結

過去1年半におよぶDRAMの継続的な価格上昇により、中国のスマートフォンメーカーも他国のスマートフォンメーカーと同様、製造コストが上昇して利益を圧迫される事態に陥っている。そのため、中国の国家発展改革委員会(NDRC:中国の経済政策を一手に握る国務院の行政部門)は、2017年末に韓Samsung Electronicsの幹部を呼び出し、モバイルDRAMの価格値上に関し懸念を表明していた。これに対してSamsungは、韓国政府とも相談したうえでNDRCとの覚書(Memorandum of Understanding:MOU)に署名する方向で調整を進めているという。同MOUには、中国への投資拡大など、地場の半導体産業におけるさらなる協力に関する取り決めが含まれている模様である。

近年、中国は、半導体メモリの最大の輸入先となっている。したがって、Samsungも中国側の意見を無視する訳にもいなかい状況となっている。DRAMeXchangeの調査ディレクターであるAvril Wu氏の分析によると、NDRCとSamsungが署名するMOUは、次の2つの面でグローバルなメモリ市場に影響を与える可能性があるという。

1. DRAMは依然として供給不足に直面しているが、価格の伸びは緩和される

半導体メモリのサプライヤにとって、モバイルDRAMの現状の利益は他のメモリ製品よりもずっと低い。にもかかわらず、2018年第1四半期のスマートフォンの需要の低迷とNDRCの介入の影響を受け、モバイルDRAMの価格の伸びは限定的となる見通しである。将来的には、サプライヤは既存の生産能力をモバイルDRAMから粗利の大きい他の製品にシフトし続けて、他の製品の価格上昇も抑えることになる可能性がある。

2. サプライヤは、価格上昇を緩和するために生産能力を拡大する可能性が高い

NAND分野では、サプライヤの製品構成における3D NANDの割合が引き続き増加、2017年に比べ、供給不足は緩和しつつある。しかしながら、DRAMに関しては、まだ増産体制の準備が整ってはいないため、供給不足は解消されていない。中国政府が価格設定に介入しても、それだけではサプライヤがコストを下げるのが難しい場合は、生産能力拡大に動く可能性があるとDRAMeXchangeは指摘している。

生産能力拡大によるビット出荷量が増加すれば価格が安定するだけでなく、サプライヤは売上数量の増加でDRAM製品の収益を維持することが可能だと見られるためだ。

ただし、すぐに増産を開始するというわけにはいかないのが現状だ。Samsungの新たなメモリ生産拠点である平澤(ピョンテク)工場からの量産出荷は2018年後半にならないと始まらないためで、それまでの間、供給量は制限され続けることとなる。また、中国のNDRCによるSamsungへの行政指導により2018年上半期、モバイルDRAMの価格の上昇傾向が緩和される可能性があるが、これまでのところその効果は限定的であるという。