東北大学は、想定外の故障に対して即座に適応できる移動ロボットの開発に成功したことを発表した。

この研究成果は、同大電気通信研究所の石黒章夫教授、加納剛史准教授、佐藤英毅氏、小野達也氏、北海道大学電子科学研究所の青沼仁志准教授、同大大学院医学系研究科の松坂義哉講師(現 東北医科薬科大学教授)の研究グループによるもので、12月13日、英国の科学誌「Royal Society Open Science」電子版に掲載された。

  • 想定外の故障に対して即座に適応できる移動ロボットの開発に成功

    (a) クモヒトデの全体像(左)と腕を自ら切断して推進する様子(右)。(b)開発したクモヒトデ型ロボットPENTABOT II(左)と、腕を破壊した時のロボットの運動の様子(右)(出所:東北大Webサイト)

移動ロボットが未知の実世界環境下で動き回るためには、故障してもリアルタイムに適応し、移動能力を維持することが不可欠であるが、従来のロボットは想定外の故障に適応するのに数十秒〜数分もの時間を要していた。

研究グループは、こうした問題を解決するため、原初的な棘皮(きょくひ)動物であるクモヒトデに着目した。クモヒトデには「脳」のような高度な情報処理を担う中枢神経系はなく、放射神経と呼ばれる単純な神経系しかないにもかかわらず、5本の柔軟な腕を適切に協調させて推進することが可能である。さらに、外敵に襲われるなどして腕を失った際、残った腕が何本であってもそれらを即座に協調させて推進し続けることができるなど、驚異的な耐故障性を有している。

そこで、腕を除去あるいは短くしたクモヒトデの観察結果をもとに、「各腕が環境から進行方向側に反力を受けたときにのみ地面を蹴る」という、極めてシンプルな数式で記述される自律分散制御則を設計した。これをクモヒトデ型ロボットに実装したところ、腕をいかように破壊しても数秒以内に適応して動き続けることができた。

この成果は、想定外の事象に対処可能な適応能力の高いロボットを実現するための基盤技術を提供し、災害現場などの過酷な環境下でも機能できる移動ロボットの実現へと道を切り拓くと期待される。また、動物が身体の一部に傷害を負ったときに、身体の協調の仕方を適切に変えて動く原理の解明にもつながることが期待できる。