京都大学(京大)は12月4日、LANDSAT-8衛星リモートセンシングを用いて、船の航行や水の利用に大きな影響を与える沈水植物(水底に根を張る水草)をモニタリングする手法を開発したと発表した。
同成果は、京大 総合生存学館の山敷庸亮 教授、防災研究所のShweta Yadav特定研究員、滋賀県琵琶湖環境科学研究センターの石川可奈子 専門研究員 、工学研究科の米田稔 教授、須崎純一 准教授、田村正行 名誉教授らの研究グループによるもの。詳細は、スイスの学術誌「Remote Sensing」誌に掲載された。
湖における富栄養化の指標として、植物プランクトン濃度が長い間最重要とされており、その監視技術は海洋と淡水域について確立されてきた。
しかし近年、沈水植物の被害が深刻化してきた琵琶湖では、沈水植物の大量繁茂による船舶航行障害、景観悪化、漁業・取水障害、生態系への悪影響などが問題になっており、その分布域と量の推定技術開発が求められていたが、植物プランクトンと沈水植物の反射スペクトルの分離は困難だった。
研究グループは、米国の地球観測衛星「LANDSAT-8」により2013年から2016年にかけて撮影した琵琶湖南湖の画像から、湖面の明度を手掛かりに沈水植物の分布を解析するアルゴリズムを開発した。その結果、実際に潜水調査した結果とほぼ変わらない精度で沈水植物を見つけ出すことに成功した。今回開発した技術では、空間解像度30mの衛星画像からでも沈水植物の定量化とその分類が条件によって可能であることが証明されたという。
研究グループは今後の研究方針について「2017年12月23日打ち上げ予定の気候変動観測衛星『しきさい』(GCOM-C)を用いたJAXAとの共同研究を通じて、世界の湖における淡水管理に貢献したい」とコメントしている。