理化学研究所(理研)は11月3日、哺乳類の大脳皮質が単純な機能単位回路の繰り返しからなる六方格子状の構造を持つことを発見したと発表した。
同成果は、理化学研究所脳科学総合研究センター局所神経回路研究チーム 細谷俊彦チームリーダー、丸岡久人研究員らの研究グループによるもので、11月2日付の米国科学誌「Science」オンライン版に掲載された。
大脳はさまざまな皮質領野に分かれており、それぞれ感覚処理、運動制御、言語、思考など異なる機能をつかさどっている。大脳は極めて複雑な組織なため、その回路の構造には不明な点が多く残っている。
大脳の神経細胞は厚さ1~2mm程度のシート(大脳皮質)を作っており、さらにこの皮質は機能の異なる6つの層に分かれている。同研究グループは、神経細胞の分類が比較的進んでいる第5層に着目し、マウス脳を用いてその構造を解析している。これまでに、皮質下投射細胞(SCPNs)が、幅1~2細胞、高さ数細胞程度の細長いクラスター(SCPNマイクロカラム)を形成していること、多数のSCPNマイクロカラムが第5層内に並んでいることを発見していた。
これまでの研究ではマウス脳を薄いスライスにして解析していたが、今回の研究では、神経終末への色素注入や抗体染色など用いて個々の細胞タイプを可視化し、脳サンプル全体を透明化して3次元撮影することにより、第5層において1個体当たり数千~数万個の細胞の位置座標を決定した。
この結果、マウス大脳皮質第5層では、SCPNマイクロカラムは視覚野、体性感覚野、運動野で共通にみられ、ハニカム状の六方格子配列をとって並んでいること、皮質投射細胞(CPNs)もマイクロカラム(CPNマイクロカラム)を形成し、SCPNマイクロカラムと互い違いに並んでいることなどが明らかになった。同じマイクロカラムに含まれる細胞は同期した神経活動を示し、方位選択性や眼優位性などの刺激応答性が類似していたという。
第5層がマイクロカラムの繰り返しで構成されていることが明らかになったことから、10個程度の細胞からなる単一のマイクロカラムの機能を明らかにできれば、第5層の機能の深い理解が得られる可能性がある。また、マイクロカラムはさまざまな皮質領野で共通な機能単位であるため、同研究グループは、感覚、運動制御、言語などの広範な脳機能に共通である普遍的な情報処理の機構が明らかになることが期待されるとしている。