半導体市場動向調査企業である米VLSIresearchは6月2日(米国時間)、2016年の半導体製造装置付帯のサブシステムサプライヤの売上高トップ10を発表した。サブシステムというのは、半導体製造装置にとって不可欠な付帯設備・部品で、例えば、露光装置のカギを握るマルチレンズシステムや光源、真空装置に必須のポンプや真空バルブ、装置内でウェハを搬送するロボット、各種計測器、ガスパネル、流体供給システム、プローブカードなど多岐にわたる。
2016年における世界の半導体製造装置業界(ディスプレイや太陽電池など関連業界を含む)の売上高は、前年比15.5%増の94億ドル超で史上最高額を更新した。また、納入先である半導体メーカーが行っているのと同様に、いくつかの買収が行われた。最も注目すべき買収は、スウェーデンに本拠を置く産業機械メーカーAtlas Copcoによる独Leybold Vacuumと韓CSKの買収と、米MKS Instrumentによる光学機器メーカーである米Newportの買収だった。買収とは異なるが、もう1つ重要な出来事として、スイスに本拠を置くVAT ValveがIPOを実施。同社の2016年業績は前年比で35%増と躍進している。
2016年の半導体製造装置付帯サブシステムサプライヤの売上高ランキング・トップ10を見ると、トップ10社の売上高のみで、サブシステム市場の総売上高の約5割を占める規模となっている。その中でもトップは、世界最高水準のレンズメーカーとして知られる独Carl Zeissで、売上高はおよそ10億ドル。ニコンやキヤノンからシェアを奪っていまや世界トップのリソグラフィ装置メーカーに躍り出た蘭ASMLが全面採用している点が強みとなっている。
2位は、真空機器メーカーの英Edwardsである。2016年の売上高は8億2000万ドルへ伸ばし、トップのASMLとの差を詰めている。ちなみにEdwardsは、Atlas Copcoに2013年に買収され、現在は同社のグループ企業になっている。
3位は、米国の東海岸を本拠とするMKS Instrumentsで、その売上高は前年比34%増となる7億2000万ドルを達成。MKSは半導体やFPD製造を始めとするさまざまな製造プロセスに用いられるガスの測定・制御・分析を行う機器、反応性ガス発生器はじめさまざまなサブシステムのサプライヤだ。
4位は半導体製造装置向け電源システムのリーディングサプライヤとし確固たる地位を築いている米Advanced Energyで、前年比25%増の売上高により前年4位の米Brooks Automationを追い抜いた。5位のスイスVAT Valveは真空プロセス機器の需要が急増したため、前年比35%増という高い売上高の伸びにより、前年の6位から5位へと順位を1位上げた。この2社の成長のあおりを受け、6位へと後退したのが、半導体自動搬送システムを手がけるBrooks Automationとなる。
京都に本拠を置く堀場製作所は、流体制御装置で好業績をあげて、前年に引き続き7位を維持。日本企業としてはトップのサブシステムサプライヤで、続いて8位に、真空ポンプや排ガス処理装置の荏原製作所が前年の10位からジャンプアップを果たした。そして9位に、真空機器の独Pfeiffer Vacuum、10位に、半導体自動搬送システムを得意とする平田機工がランクイン。平田機工は、前年の14位から4つ順位を上げてトップ10入りを果たした。
なお、VLSIresearchヨーロッパ支社にてマネージング・ディレクターを務めるジョン・ウェスト(John West)氏は、「2016年は、サブシステムサプライヤにとって、四半期ごとに連続して売上高が伸びるなど、記録を塗り替え続けた年となった。2017年年以降の4~8四半期も、半導体メモリおよび有機EL(OLED)ディスプレイ技術への旺盛な投資が見込まれているので、四半期売上高は引き続き高水準で推移することが予想される。ただし、すでに拡大しきってしまったサプライチェーンのため、指定された納期どおりにサブシステムを納品できるか否かという重大な問題に直面する可能性もある」と述べている。