OKIエンジニアリング(OEG)は4月13日、自動車のエレクトロニクス化に伴って需要の増加が続いている車載電子機器・装置の試験サービスの機能を拡張し、埼玉県本庄市にある同社の北関東試験センタにて新拠点「カーエレクトロニクス テストラボ」を開設したことを発表した。
製造業のプロダクトライフサイクルを考えると、企画、設計、試作、認定、製造、アフターという順になるが、モノを作る時の部品選定時の特性評価や良品・故障解析、実際にモノが正常に動作するのか、といった信頼性・環境試験やEMC/製品安全試験などが必要であり、同社はEMSとしてカスタマのニーズの変化に対応を続けてきた。
中でも自動車は、近年、ハイブリッド化や電気自動車(EV)、安心・安全のためのADAS、そして自動運転と、エレクトロニクス化の進展が著しく、搭載されるセンサや半導体の数なども増加しているが、車体制御などを実際に行っているECUの故障は、事故に直結するため、許されるものではなく、高い信頼性を確保する必要があり、OEGでも半導体をはじめとする電子部品の良品解析やデバイス品質の向上に向けたアドバイスの提供なども含めた形で取り組んできており、例えば国内自動車メーカーでは日産自動車が、同社に委託して安全性確保に向けた良品解析を行っていることを明らかにしている。
同社代表取締役社長の柴田康典氏は「認定と環境試験を個別に提供している企業はあるが、その両方を1社で提供しているのはほかにない特徴だと思っている」と、自社の有意な部分を強調した。また、自動車関連については設備投資を毎年のように進めてきているものの、需要の伸びのほうが高い状況で、例えば車載機器向け電波暗室の稼働率は2016年度で140%に到達しており、今後もエレクトロニクス化の進展による需要増が見込まれることも含めて、今回のテストラボの開設、ならびに設備増強を決定したという。
2016年度に新たに導入・増設されたのは、車載機器の電波試験を行う「第三/第四車載電波暗室」、反射してあちこちから電波が飛んでくる環境での試験を可能とする「リバブレーションチャンバー」、加熱後、冷水を繰り返しかけてECUが故障しないかといった調査を行う「アイスウォーター衝撃試験」、「大型塩水噴霧試験」などとなっており、2017年度も耐水(IP)試験やアイスウォーター衝撃試験の増設を進めていくとしているほか、人員も2015年度比で10%の増員を図る計画としている。
リバブレーションチャンバ。奥にあるアンテナから80MHz~3.2GHz(電界強度は200V/m)の周波数を飛ばし、プロペラ(撹拌機)を回すと、その電波が反射し、あちこちに散乱。それを手前のアンテナで受信する。実際の電子機器は、受信アンテナの後ろ側において試験を行う |
電磁界ノイズに曝された際の耐性を評価する試験システム「GTEMセル」も大型のものを新たに導入。試験レベルは10kHz~3.2GHz(200V/m)、EUT(被試験機器)サイズは620mm×620mm×490mm |
「稼働率が140%ということで、顧客に試験まで待ってもらう必要があった。しかし今回、電波暗室を従来比2倍の4室に増やしたことで、試験待ち時間を最小化することができるようになる」と同社取締役EMC事業部長の菊池秀克氏は今回の設備投資のメリットを強調するほか、「どの暗室でも同一の仕様のもと、試験を行うことが可能であり、再現性の高い試験データを提供することが可能になる」と、その特徴を説明した。
第四電波暗室の様子。部屋の仕様は第三電波暗室を同じで、状況に応じて使い分けが可能。開設時点では、それぞれ第三が機器に電波をあてた際の状況を確認する部屋、第四が機器から出てくる電波を確認する部屋、というように分けられていた |
テストラボに導入されているその他の設備。上段左から、日本に1台だけという「大型恒温恒湿試験(赤外線照射試験)」、100℃まで加熱した機器に冷水(真水・塩水・泥水)をかける「アイスウォーター衝撃試験」、 「複合振動試験」、「正弦波 振動試験」、「粉塵試験」、「液槽冷熱衝撃試験装置(手前)と急速温度変化チャンバー(奥)」、「塩水噴霧試験装置」、「10m法対応大型電波暗室」 |
なお同社では、今回の設備増強により、一時的に稼働率は下がるが、このままの勢いで受託件数が増えていくと、2020年には再び稼働率が140%まで上昇すると見ており、適宜設備投資や人員の増加を進め、高い稼働率を維持しつつ、顧客に不便をかけないようにしていきたいとしているほか、今回導入した設備は、例えばリバブレーションチャンバーなどは宇宙・防衛分野での試験にも使える高い信頼性があり、そうした自動車分野以外での活用も進めていき、さまざまな分野に向けて信頼性のトータルソリューションの提供を今後も図って行きたいとしていた。