ここ数年、アニメーション制作の現場にデジタル化の波が押し寄せている。様々なメリットがうたわれるデジタル作画だが、一方で大きく制作環境が変わることへの戸惑いの声もある。

実際にデジタル化することで、制作の現場に何が起きるのか。「正解するカド」などを制作する東映アニメーションから、3名のメインスタッフがACTF(アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム)のセッションに登壇した。現場のリアルな声をレポートする。

「正解するカド」の現場はどうデジタル化されているのか

「正解するカド」は東映アニメーションが制作するアニメ作品だ。メインキャラはCGで描かれているが、全編フルCDではなく、デジタル作画も取り入れて制作されている。ACTF2017のセッションでは同作品に携わっている3名のメインスタッフが登壇し、作品制作におけるデジタル作画のメリットなどについて語られた。

「正解するカド」PVより

「正解するカド」の制作では、絵コンテから撮影まで紙出しを行うことなく、デジタルで制作されている。独自の作画運営用のアプリケーションを作成し、制作の回収作業をなくしたことで、タップの付替えや原画のコピーなど事務作業を大幅に削減できたという。よって、回収業務における車両の利用もほぼしていないとのことだ。

さらに、現在はデジタルタイムシートを開発中で、遠隔地で原画マンとデジタルでスムーズにやり取りできるツールも独自で試験運用中という。

現状、東映アニメーション社内ではシナリオ~絵コンテまではアナログ制作。「正解するカド」ではデジタル映像部が全フローをデジタル化し、TVシリーズ制作での運用を実践している

同社の社内制作部ではシナリオから絵コンテ、原画までは紙を使用し、動画から仕上げ、撮影、編集といった後半の作業をデジタル化している。動画と仕上げで使用しているソフトは、動画は「スタイロス」、仕上げは「ペイントマン」。これにより、東映アニメーションフィリピンでは月に約6万枚の動画を生産することが可能になっている。

一方のデジタル映像部では、「正解するカド」の制作において、シナリオ・絵コンテ・原画も含むすべての行程をデジタル化。TVシリーズでの運用を実践中だ。

デジタル映像部の取り組み実績一覧

同作の監督を務める渡辺正樹氏は、22インチの液晶タブレットを作業マシンとして使用している。実は最初は13インチのものを使用しており、絵コンテ段階ではそれでもまったく問題はなかった。ただ、演出段階では画面サイズが小さくやりづらかったため、大きな液晶タブレットに変更したのだという。

また、演出のチェックや全体の把握など、様々な要素を見なければならないため、モニターは大きいに越したことはないのだとか。

監督・演出の製作環境

次に作画監督の作業環境だが、やはりワコムの22インチと13インチの液晶タブレットを使用している。原画については13インチでも作業可能というが、最近登場した16インチの方が望ましいというのが現場の声だ。

なぜなら16インチあると、ディスプレイ内に「設定」画面を置くスペースができるから、とりょーちも氏。逆に22インチまで大きくなると、机を占有される欠点があり、モバイル性との兼ね合いで16インチのバランスがベストなのだ。

作画監督・原画の製作環境