独立系半導体ナノテク研究機関であるベルギーimecと姉妹機関である独立系IoTナノテク研究機関の蘭Holst Centreは、Cartamundiと共同で2017年2月5日-9日に米国サンフランシスコで開催された「International Solid-State Circuits Conference 2017(ISSCC 2017)」にて、プラスチック基板上に形成したIGZO TFTを用いた近距離無線通信(NFC)タグを発表した。

プラスチック・エレクトロニクスにより、シリコンでは考えられなかったような低コストのデバイスが製造できるようになり、これまで半導体が入りづらかった個別物品のID、食品の包装、ブランド品の盗難防止などさまざまな分野への応用が考えられている。このような新しいアプリケーションでは、半導体デバイスを使い捨てることが想定されるため、デバイスを継続的に供給する必要があり、imecでは大面積一括製造プロセスを使用可能なIGZO TFT技術は採用した。

同プロセスでは、低寄生容量と高カットオフ周波数を最適化した自己整合TFTアーキテクチャを開発したことで、13.56MHzの搬送周波数をプラスチックチップのシステムクロックに変換するクロック分割回路の設計が可能になったという。また、ロジックゲートおよびシステムレベルでの最適化により消費電力を7.5mWに低減し、市販のスマホでの読み出しを可能にした。

なお、imecでは今回の研究について、「もともとシリコンCMOS用に準備されたISO規格に適合するようなプラスチックエレクトロニクスデバイスを作ることは、チャレンジングであった。結果として、薄膜プラスチックの採用により、新しいNFCタグは従来よりも薄くすることができ、機械的な堅牢性も維持できた。また、自己整合IGZO TFT技術により、大量かつ低コストでのチップ製造も可能となった」と評価を行っている。

imecらが開発したプラスチック基板上にIGZO TFTを形成したNFCタグ (画像提供:imec)