市場動向調査企業である台湾TrendForceは、2016年の世界半導体ファブレス売上高ランキング・トップ10予測を発表した。

それによると、米Qualcommが、2年連続で売上高を減少させたにも関わらずトップの地位を維持する見込みである。2位は米Avago Technologies(登記上の本社はシンガポール)が米Breoadcomを買収して誕生した新生Broadcomが、Qualcommに肉薄する形で2位となる見込みのほか、3位は、Qualcommのシェアを奪う形で急成長を遂げている台湾MediaTekとなり、この3社だけでトップ10社の売上高総額の65%を占める見通しだという。また、MediaTekと同じ台湾企業であるNovatechが前年比22.5%という高成長率でトップ10入りを果たした点も注目される。

表1 2016年世界ファブレスICデザインハウス売上高ランキング・トップ10予測。表の左より、企業名、2015年売上高(単位:百万ドル)、企業名、買収・合併を考慮した2015年の売上高、2016年の売上高予測値(単位:百万ドル)、 2016年予測値の前年比増減(%) (出所:TrendForce、2016年12月時点)

トップ10企業のうち、前年比プラス成長したのはMediaTek、NVIDIA、AMD、Xilinx、そしてRealtekの5社。Mediatekは、台湾内のデザインハウスを4社買収したうえに、中国本土のスマートフォンメーカーからの需要により、17.6%成長する見込みであるという。また、NVIDIAは、これまでPCゲーム分野などで地位を確立してきたが、最近はデータセンターや車載エレクトロニクス分野でも売り上げを伸ばしているほか、AMDは、2016年第3四半期に、セミカスタム・チップ、組み込み、およびエンタープライズ向け市場で売り上げを伸ばしたが、この3市場が今後もしばらくは同社の重要な市場になるだろうとTrendForceは見ている。

一方、Qualcomm、Broadcom、米Marvell、Novatekと英Dialogが、2016年は前年比マイナス成長となる見込みである。Qualcommは、MediaTekだけではなく、中国本土のICデザインハウスとのシェア争いに巻き込まれて苦戦を強いられているという。例えばHiSiliconやSpreadtrumの技術は、Qualcommに追いつくほどに進歩しており、また、HiSiliconは、同じグループに属するHuaweiに大量のチップを提供しているというメリットもある。さらにQualcommの業績悪化には、Samsungのスマートフォン「Galaxy Note 7」の製造中止も影響した模様だ。ちなみに、Broadcomの売り上げ低下は、ワイヤレスIoTビジネスをCypress Semiconductorに売却したためである。

なお、HiSiliconとSpreadtrumは、業績を一切公表していないとの理由で、TrendForceではランキングにこの2社を含めていない。2社はともに中国のスマートフォン市場の成長に支えられて高業績を残せそうであり、TrendForceでは、HiSiliconの売上高を前年比11.8%増の39億8000万ドル、Spreadtrumの売上高を同8.1%増の19億1000万ドルと予測している。

中国本土では、ファブレス企業が雨後のたけのこのように成長してきており、すでに1000社を超えるファブレスが存在し、その総売上高も急騰していると言われる。中国のファブレスは今後さらに誕生していくことが見込まれ、日本とは対照的な状況が、半導体製造だけではなく設計でも生じていることがうかがえる。