ベルギーの独立系半導体ナノテク研究機関imecは、7月12-14日に米国西海岸で開催された半導体製造装置展示会「Semicon West」にあわせて3件のニュースを発表した。

imecがフロリダに進出、IC設計センター開設

imecは、米国フロリダ州Oaceolaにフォトニクスおよびエレクトロニクス分野の技術を活用したセンサや高速IC設計を目的とした研究開発子会社「imec Florida」を開設することで、フロリダ州Oaceola郡の地方政府、地元のセントラル・フロリダ大学(UCF)や先進製造研究国際コンソーシアム(International Consortium for Advanced Manufacturing Research:ICAMR)と7月8日に協業契約の調印を行った。imec Floridaは郡政府およびUCFより補助金を受け、ICAMRが研究施設を提供する。これらの協力組織は、imec Florida誘致を呼び水にして世界中のフォトニクス・エレクトロニクス関連企業を同地に誘致しようとしている。

imec Floridaは、ベルギーにあるimec本部、米国の半導体およびシステム企業、大学、研究機関と連携し、化合物半導体材料を中心にフォトニクスおよびエレクトロニクスの研究を行う。具体的には、IoT時代に必須のテラヘルツセンサ、LIDAR、イメージセンサ、その他幅広いセンサおよびそのための高速IC設計を行う。imecはベルギー本部での設計-試作-少量生産の一貫サービス(imec IC-Link)もimec Floridaを通して、米国企業に提供していくほか、米国の大学へのファウンドリサービスも行うとする。

imec Floridaは、Oaceola郡政府やUCFから5年間に渡り補助金を受け、当初は10名の研究者・設計者を雇用し、5年以内に100名に増員する。imec Floriadaのトップ(ゼネラルマネージャー)には、imec VP(imecオランダ支所駐在ゼネラルマネージャー)のBert Gyselinckxs氏が就任した。なおimecは、すでにオランダ、中国(上海)、台湾、インドに同種の設計センターを開設し、今回開設のフロリダをふくめて研究セールスの世界展開を着々と進めている。

7nm以降の設計・プロセス最適化めざしてARMと戦略的協業

imecは、7nmおよびそれ以降のデバイス設計とプロセスを共に最適化するために、大手半導体IPベンダ、英国ARMと戦略的な協業を行うことで合意した。具体的には、ARMがimecのINSITE(the Integrated Solutions for Technology Exploration)と呼ばれる産学協同の設計支援プログラムに参画し、7nmおよびそれ以降の回路設計およびシステムレベルのアーキテクチャの消費電力、性能、占有面積、製造コストへの影響を明らかにする。

7nmおよびそれ以降は、デバイス構造、プロセスにさまざまな選択肢(例えばFinFETや縦型ナノワイヤFET、横型ナノワイヤFET、セルアーキテクチャ、相互配線手法、電極材料など)があり、imecが開発した最先端プロセスを使ってシステム設計する際、構造および材料はどの選択肢を使うのが最適か、複雑な多変量の相互作用を含めて詳細に検討する必要があるが、INSITEプログラムは、これを支援する。この産学共同プログラムには、すでに世界中の10社以上の半導体メーカーが参加している。

imec CEO兼社長のLuc Van den hove氏は「今回のARMとの戦略的協業は、imecにとって非常に重要である。これにより、imecの開発する最先端の超微細プロセスを使ってIC設計しようとするパートナーの半導体企業の設計サイクルを早め、商品化や市場へのアクセスを早めることに貢献するだろう」と述べている。

Synapsysと共同で7nm以降の相互配線材料選択に向けたツールを開発

imecは、7nmおよびそれ以降のプロセスにおける相互配線材料およびライナーバリアを多くの候補の中からスクリーニングし、最適な材料を選択するための相互配線抵抗モデル(Interconnect Resistivity Model)を大手EDAベンダであるSynapsysと共同開発した。

プロセスが微細化するにつれて、相互配線の寄生容量が標準セルのスイッチング遅延に顕著に影響するようになってきている。今回の両社による協業でウェハデータの無い開発初期段階であっても、プロセス集積段階であっても、シミュレーションにより相互配線とプロセスオプションの評価を行え、高価で時間のかかるウェハを用いた実評価を減らせる。

この新しい抵抗モデルを使って、顧客はSynopsisプロセスエミュレーションツール上で相互配線構造の作製を3次元シミュレーションで行え、引き続き、配線およびヴィアの抵抗をシミュレーションできる(下図)。imecは、Cu、W(タングステン)、Ru(ルテニウム)、およびCo(コバルト)について抵抗モデルを使えるように整備した。

imecは、世界中の企業と積極的に協業して7nmおよびそれ以降のプロセスやデバイスの実用化を急いでいる。

Synopsysの「Sentaurusプロセスエクスプローラー」を使ってプロセスエミュレーション後の集積多層配線の3次元モデル(左)と配線やヴィア内の3次元局所抵抗プロファイル(右)