Xilinxの日本法人であるザイリンクスは6月24日、記者説明会を開催し、同社の戦略に関する最新のアップデートを紹介したので、その内容をご紹介したいと思う。
今回の説明会は、同社が昨年9月に開催した戦略説明会の延長となる。前回は今後の同社の力点が、ハードウェアからソフトウェアを含むソリューションに移りつつあることを紹介したものだったが、今回はそれを具体的に業界のメガトレンドと絡める形で、具体的にXilinxがどういう形でマーケットを握ってゆくかを細かく説明するものとなった。
まず挨拶に立ったザイリンクスのSam Rogan社長(Photo01)は、あくまでも日本の状況としながら、こんなグラフ(Photo02)を示し、悲願だった国内における50%以上のマーケットシェアの確保に成功したことを紹介した(Photo02)。同社の場合、決算が3月の関係で、例えばQ1FY16というのは2015年4月~6月となる。Q4FY16が2016年1月~3月で、ここで59%のマーケットシェアを握れた事は、氏にとっては非常に嬉しい事だったようだ。
Photo01:最近ザイリンクスの代表取締役社長に加え、日本および韓国担当のVice Presidentの肩書きが付いた。「歴史は繰り返すんですよ」と挨拶していたが、元々氏がAMDで日本以外に韓国やインドを担当していた事を知っている人間は会場に何人いたやら? |
Photo02:このグラフの意味は、例えばこの記事をお読みいただければわかるかと思う |
これに続き、昨年9月同様Steve Glaser氏(Photo03)が説明を行った。氏は業界の4つのメガトレンドとして
- クラウドコンピューティング
- エンベデッドビジョン
- インダストリアルIoT
- 5Gワイヤレス
を挙げ、それぞれに対応したソリューションをXilinxが持っている事を示した(Photo04)上で、各々の項目について順に説明を行っていった。
Photo03:Steve Glaser氏(Senior VP,Strategy & Marketing)。こちらの顔を完全に覚えておられたようで、笑顔で挨拶をしてくれた |
Photo04:HBM/CCIXに関しては後述 |
まずクラウドコンピューティングについてだが、Xilinxはこの分野では5年間で30億ドルのSAM(Served Available Market)があると見込んでいる。そもそもこのマーケットの場合、まずムーアの法則の停滞もあって汎用CPUの性能が上がりにくくなっている一方で、より高い性能が要求されるようになっており、これを実現するためにHeterogeneous Configurationが必須である、としている(Photo06)。
Photo05:ちなみに後の質疑応答では、ストレージとリコンフィギュラブルの2つが同程度、ネットワークがその半分くらいの売り上げになるのでは? というラフな見通しが語られた |
Photo06:汎用CPUをFPGAに置き換えることで、10~35倍の「性能/消費電力比」の改善ができる、という話 |
「CCIX」(Photo07)はまさしくこうした用途に向けての拡張、という事も出来る。ちなみにCCIXをサポートする開発環境はOpenCLに対応したSDAccelで、これを利用してOpenCLベースのアプリケーションをCCIX経由で高速に実行できる、という話であった。
Photo07:CCIXのそもそもの動機は、IBMのCAPIをベースとしたNVIDIAのNVLINK、それとIntelによるCPUとFPGAの統合n(I/Fがどうなるかは現時点では不明)に対する対抗策、という意味合いがあるが、話が難しいのはXilinxはCAPIもサポートするところだろうか |
もっともCCIXの中身はまだはっきりしない。Glaser氏は「6カ月以内に最初の仕様が出るのではないか」という見通しを語ったが、それが正式な仕様を意味するのか、最初の草案なのかは不明だ。またCCIXは名前の通りキャッシュコヒーレンシ(Cache Coherency)を実現するバスなので、恐らくレイテンシは相応に低い(そうでないとシステムの性能に深刻な影響が出るだろう)事は期待できるが、帯域はまた別の問題である。後で話を聞いたところ、「CCIXは、例えば25Gbpsのレーンで実現できる帯域はそれほど大きく無い。SoC内部のAXI経由の接続とは比較にならない」としていた。
またデータセンター用途ではハイパースケールデータセンターでの採用が進んでいる事を挙げ(Photo08)、こうした用途向けHBMのサポート(Photo09)を発表しており、こうした製品やソリューションによってCloud Computingのマーケットを獲得する、という話であった。