ここからは分野別の話になった。まずはスマートシティの実現である。キーワードは単純(Photo14)だが、実現にはさまざまな課題がある。ここではTED Fellow & Urban DesignerのMitchell Joachim氏を招き、さまざまな密度のSmart Cityのあるべき姿のアイディアを披露した後で、そのアイディアの一部の基礎となりうるものの1つとして、「C-ITS(Cooperative Intelligent Transportation System)」向けにMIFARE/NFC/V2XといったNXPの技術をすでにSiemensが採用して開発を行っている事をSiemens Intelligent Traffic Systems,USのCEOであるMarcus Welz氏を招いて紹介した。

Photo14:このあたりは、昔のFreescaleのメッセージをちょっと思い出す

さらに広範な例として、AFD(オースチン消防署)内に設けられたRED(Rebotics Emergency Deployment) Teamを紹介(Photo15)した。REDグループは名前の通り、ドローンを利用するパイロットプロジェクトであるが、ここでもユーザビリティやコミュニケーション、そしてセキュリティの重要性が強調された。

Photo15:左が説明を行われたCoitt Kessler氏(Program Manager, Firefighter, AFD)

次に話はヘルスケアの分野に移った。ここではDictum HealthのPaul Landesman博士を招き、NXPのi.MXを利用した同社のIDM100という医療用タブレットでどのような具合でリモートで患者情報を取得して診断ができるかというデモを行いながら、ソリューションが充実している事をアピールした。

その後はConnected Worldに話は移った。NXPは旧FreescaleのネットワークプロセッサやRFソリューションに加え、NXPのセキュリティのリソースも併せてワンストップですべてのソリューションを提供できる事をまず触れた上で(Photo16)、NXP Smarter World Tourのビデオを紹介しながらさまざまなコネクテッドデバイスがNXPのソリューションで構築できる事を示した。

Photo16:このあたりはテクノロジーはともかく、ソリューションとしてはまだインテグレーションに欠ける部分はあるのだが、これに関してはまた後ほどとしたい

このコネクテッドデバイスはさまざまな分野で利用される。例えば昨今の自動車の革新は90%がエレクトロニクスによるものであり、そこで同社はマーケットリーダーの座にあるし、特にインフォテインメント/車載ネットワーク/車載用ID認証/ボディ&セーフティではNo.1のポジションにあると強調。また自動車事故での死者は全世界で130万人ほどに上るが、これを減少させるためのADASシステム向けとしてすでに3000万個のプロセッサを出荷したとする。特に自動運転に関しては、この日にBlueBoxが発表された事もあり、Matt Johnson氏(VP&GM, Automotive MCUs & Processors, NXP)がもう少し突っ込んだ説明も行っていた(Photo17)。

Photo17:左にあるのは、BlueBoxというか車載機器のデモ用に3Dプリンタで製造したという車(のモックアップ)。動力は付いてないので、もちろん自走はできない

これに続いてコネクテッドデバイス絡みでもう1つ、スマートデバイスの紹介もあった。さまざまなHMIに絡む部分であるが、より高解像度の表示や、自然言語解析なども要求される部分である。またクラウドとの接続性なども要求される。こうした部分に対し、NXPはワンストップの形でトータルソリューションを提供できる事を幾つか例を示しながら紹介を行って基調講演を終了した。

以上が大まかな基調講演の内容である。メインテーマは「Smart」という訳だが、隠れたテーマは「北米マーケットへのNXPのアピール」という事であったと思う。元々NXPは欧州では強いが、北米はそれほどでもない。そしてNXP FTFの参加者は、どちらかといえばこれまでFreescaleの製品を使っていた開発者であって、NXPのテクノロジや製品を熟知しているとは言えない。こうした人々に、NXPが元々持っていた技術や製品を紹介するのが、オースチンでNXP FTFを開催した(ほかにも色々あるが)理由「の1つ」としても良いと思われる。