独Infineon Technologiesの経営最高責任者(CEO)であるReinhard Ploss氏が、5月下旬にベルギー・ブリュッセルで開催された「imec Technology Forum (ITF) Brussels 2016」で「スマート・イノベーション」と題した招待講演を行い、自社の半導体戦略や企業文化を変革するイノベーションへの取り組みについて語った。
微細化の限界突破にはイノベ―ションが必要
同氏はまず、多くの人の関心の的である「ムーアの法則の終焉」について話を始めた。50年以上に渡り継続してきたムーアの法則は今、適用限界という課題に直面している。半導体研究者の努力で物理的な限界はさらに伸びるかもしれないが、商売上の限界を打ち破るのはむずかしい。
ここで言う商売上の限界とは何か?。CMOSデバイスの微細化が90nm、64nm、45nm、28nmと進展するにつれて、トランジスタ1個当たりの製造コストは順調に低減し続けてきた。これが半導体産業が繁栄する源泉になってきた。しかし、20nm以降、微細加工プロセスの困難さのために、逆に製造コストが上昇してしまい、会社を経営する立場の者にとっては、微細化はもはや利益をもたらさないのではないかと疑問が沸いている状況だ。同氏も、「CEOの立場にいる者として、この点に神経質にならざるを得ない」と語る。微細化が商売上の限界に直面したからには、ブレークスルーを起こすための何らかのイノベーションが必要となる。
製品思考からシステム理解へ戦略変更
一般的に、問題は従来と同じ考え方では解決できないので、現在の課題に対応するためには新たなアプローチが必要とされる。ロードマップの終焉という問題は、多くの場合、必ずしも技術的観点からではなく、むしろ性能や使いやすさや経済性の複合した観点から到達することとなる。このような事実認識に基づき、Infineonは「半導体製品の思考から(脱皮して)システムの理解(を重視)へ(From product thinking to system understanding)」という戦略を導入したという。アプリケーションやシステム、それらの最終市場についての深く理解することは、半導体回路に集積するための機能やアーキテクチャの適切な選択や変更をきちんとした根拠に基づいて行うのに役立つ。この戦略により、社員がひとりよがりの既成概念にとらわれずに考えるようになり、ユーザーの視点を考慮し、市場の動向を先取りするなど、以前は考えつかなかったような解決策がひきだせるようになったという。