半導体市場調査企業である米IC Insightsは5月3日(米国時間)、CMOSイメージセンサ市場に関する調査結果を公表した。これによると、2015年(暦年)の世界全体のCMOSイメージセンサの売上高は99億ドル(実績値)だったが、今後5年間にわたり年平均成長率9%で成長を続け2020年は152億ドルに達すると予測している(図1)。
「CMOSイメージセンサは、従来スマートフォン(スマホ)やデジタルカメラが主な用途だったが、今後は、組み込みデジタル・イメージング技術が広範な最終電子機器に浸透し、用途が広がっていく。車載向けに限れば、今後5年間にわたり年率55%という驚異の成長率で市場が拡大し、2020年には22億ドルに達する。2015年には、車載向けは世界市場での売上高の3%を占めるにすぎなかったが、2020年には14%を占めるようになろう」とIC Insightsは見ている。
イメージセンサを多数搭載することで自動車の安全性を向上
車載用CMOSイメージセンサが、これほどまでに成長が期待されるのは、自動車に新たにデジタルイメージングを適用することで、自動的に動作する安全対策が次々と搭載されているからである。1台の車両に1ダース以上のCMOSイメージセンサが搭載されて、運転手や乗客を監視するほか、事故が起きないように外部を監視し、事故が起きそうな場合にはビデオに記録する。イメージセンサはすでに車両の後側を監視するバックカメラとして活用されてきたが、新たに衝突検知や自動ブレーキシステムにも使用されている。今後、自動運転車(ドライバーレス・カー)の本格的開発により、イメージセンサの消費が加速するだろう。
車載用に次いで成長率が大きな用途は、防犯・監視用(今後5年間年率36%で成長し2020年時点での売り上げは9億1200万ドル)と医学・科学機器用途(同34%成長で、2020年に8億6700万ドル)、そして玩具・ビデオゲーム向け(同32%、2億7400万ドル)の3分野でともに年率3割を超える高成長が期待される。次いで産業向けが同18%の成長で続き, 2020年には8億9700万ドルに達する。
携帯電話向けは成長率わずか1%、デジカメ向けはマイナス成長
現在、CMOSイメージセンサの用途の7割を占める携帯電話(スマホおよび従来型携帯電話)搭載カメラ向けの今後5年間の年平均成長率は、わずか1%で、2020年には73億ドルにとどまる。2020年でも、携帯電話向けが、ダントツの最大の用途であることにはかわりはないが、シェアは70%(2015年)から48%へと大きく低下する。
PCやタブレットに組み込まれるカメラ用は今後5年間に年率6%で成長し2020年には9億7300万ドルに達するが、シェアは7%(2015年)から6%(2020年)へ後退する。デジタルカメラ向けは年率マイナス2%で下落し、2020年には6億2300万ドルにとどまる。スマートフォンに搭載されるカメラの性能が向上し、デジタルカメラの売り上げがさらに低下するだろう。
2015年のCMOSイメージセンサの世界規模の売上高は、前年比12%増の99億ドルに達したが、過去5年間にわたって売上高の記録を更新し続けてきた。半導体集積回路市場は2015年にわずかとはいえマイナス成長となったが、そんななかで、CMOSイメージセンサは2ケタ成長を遂げたことは注目されよう。半導体集積回路は今年もマイナス成長が予測されるが、CMOSイメージセンサは、今後もマシンビジョンの新たな用途を開発しつつ、少なくとも今後5年間にわたり大きな成長を続けるだろう。
世界トップメーカーの操業停止で市場に影響はでるのか?
ソニーは、世界のCMOSイメージセンサ市場で4割を超えるシェアを誇り、世界シェア1位の地位にあるが、2016年4月14日以降に継続して発生している熊本地震の影響により、イメージセンサの基幹工場である、ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング 熊本テクノロジーセンター(熊本県菊池郡)の稼動を停止しており、2016年5月末に再稼働を予定している。そのため状況次第では、世界のCMOSイメージセンサ市場にも影響が出る可能性がある。