トヨタが考える車が提供すべき機能
GTC 2016において、トヨタ自動車の人工知能技術の研究・開発を行うToyota Research Institute(トヨタリサーチ研究所:TRI)のCEOであるGill Pratt博士が基調講演を行った。Pratt氏は、MITの准教授、Olin Collegeの教授などを務めた。2010年にはDARPAに移り、Defense Science Officeのプログラムマネージャとなり、救助ロボットの能力を競うDARPA Robot Challengeプログラムをマネージした人物である。
一般にコントロールのやり方には3つのタイプがあるという。第1は直列のコントロールで、「指揮官(Commander)が命令を出し、部下(Subordinate)が命令を実行する」。命令の実行の結果、環境が変化するので、その影響が指揮官に伝えられ、次にどのような命令を出すかを考える。
第2のタイプのコントロールは、「旅客機のように操縦士(Pilot)と副操縦士(Copilot)がおり、交代しながら操縦を行う」。そして操縦操作の結果は両者にフィードバックされる。
そして第3のモデルは、「操作者(Actor)と補助者(Assistant)が並列に同時に操作をおこなうというモデルである」。例としては父親が子供の手を取ってゴルフのスイングを教えている写真が載っている。
次の写真は、左が協調無しでボックスにブロックを入れる場合、右が協調による助けがある場合で、ビデオを写したこの写真からはよくわからないが、麻痺のある人の動きをコンピュータが助けるParallelのコントロールにすると、協調無しと比べてスムーズにブロックを入れられる。
車の提供すべき機能に関して、トヨタの豊田章男社長の優先順位は、第1が安全性、第2が環境を守る、第3がみんなに移動の自由を提供する、そして第4が運転することの楽しさを提供するであるという。
安全性に関していうと、Googleは200万マイル公道走行を行った実績があるというが、トヨタは年間で約1000万台の車を生産しており、それぞれの車は10年使われる。そして、車は、年間1万マイル走行すると考えると、トヨタ車は年間1兆マイル(10の12乗)走っていることになる。
そして、1兆マイルの走行の内で、車の不良が原因の事故が年間数件発生すれば、会社の存続の危機になりかねない。つまり、200万マイルの走行実績では、まだまだ不足である。それにカリフォルニアやテキサスでの公道走行だけでなく、ありとあらゆる気象条件でテストを行わなければならない。