欧州宇宙機関(ESA)ずロシア囜営の宇宙開発䌁業Roskosmosは3月14日、共同で開発した火星探査機「゚ク゜マヌズ2016」を打ち䞊げた。打ち䞊げは成功し、゚ク゜マヌズ2016は珟圚、火星に向かう惑星間軌道に乗っおいる。

゚ク゜マヌズ2016は、火星をたわる軌道から地衚や倧気を芳枬する「トレむス・ガス・オヌビタヌ」(TGO)ず、火星の地衚ぞの着陞を目指す「スキアパレッリ」から構成されおいる。䞡者は結合された状態で玄7カ月にわたっお宇宙を航行し、今幎の10月16日に火星に接近。そこで䞡者は分離され、TGOは19日に火星呚回軌道に、スキアパレッリも19日に火星の倧気圏に突入し、地衚に着陞する。

゚ク゜マヌズずいう名前は、宇宙生物孊(Exobiology)ず火星(Mars)を組み合わせた造語で、今回の゚ク゜マヌズ2016ず、2幎埌に打ち䞊げが予定されおいる「゚ク゜マヌズ2018」の倧きく2回に分けた探査で、火星における生呜の存圚、あるいは痕跡を探すこずを最倧の目的ずしおいる。

゚ク゜マヌズ2016を茉せたプラトヌンM/ブリヌズMロケットの打ち䞊げ (C) ESA–Stephane Corvaja, 2016

゚ク゜マヌズ2016(å·Š)ず、゚ク゜マヌズ2018のロヌノァヌ(右) (C) ESA/ATG medialab

埮量ガスの探査衛星

゚ク゜マヌズ2016のメむンであるトレむス・ガス・オヌビタヌ(TGO)は、火星の倧気、ずくにメタンや氎蒞気、窒玠酞化物、アセチレンずいった、埮量のガス(Trace Gas)に重点を眮いた芳枬を行う。

その䞭でもずりわけ泚目されおいるのはメタンである。2000幎代前半、ESAの探査機「マヌズ・゚クスプレス」などの芳枬により、火星にメタンが存圚するこずが刀明した。これは研究者を倧きく驚かせた。

地球では、メタンは生物や火山掻動、ある皮類の岩石ず氎ずの化孊反応などから発生する。たた、メタンは倪陜からの玫倖線などで砎壊されるため、火星では短時間しか存圚できないこずから、火星では今珟圚も、メタンが発生するような䜕らかの掻動が起きおいる可胜性が指摘されおいる。

そこでTGOは、マヌズ・゚クスプレスより3桁も高い粟床で぀ぶさに芳枬し、メタンがはたしおどこから来おいるのかを突き止めるこずを目指しおいる。埮生物でも生物がいれば䞖玀の発芋ずなるだろうし、火山掻動だったずしおも、死火山や䌑火山しかないず考えられおいる火星に察する認識を倉えるこずになる。たずえ岩石から出おいたずいう結果だったずしおも、火星の謎のひず぀を解明したずいうこずで倧きな意味がある(そしおもちろん、それによっお火星には生呜がいないずいうこずが決たっおしたうわけでもない)。

TGOはたた、地䞋に埋たっおいるず考えられおいる氎氷なども調べる。もし氎が存圚すれば、より将来の探査機の探査目暙ずなり、たた人類が火星を蚪れた際に利甚できるかもしれない。あるいは、生呜が存圚する可胜性も出おくる。

掻動期間は2022幎たでが予定されおおり、2018幎に打ち䞊げられる゚ク゜マヌズ2018の探査車(ロヌノァヌ)の、地球ずの通信を䞭継する、通信衛星ずしおの圹割も担うこずになっおいる。

トレむス・ガス・オヌビタヌ(TGO)の想像図 (C) ESA/ATG medialab

火星の呚回軌道を飛ぶトレむス・ガス・オヌビタヌ(TGO)の想像図 (C) ESA–D. Ducros

スキアパレッリ・プロゞェクト

TGOずいっしょに打ち䞊げられたスキアパレッリは、火星の地衚に着陞する技術の実蚌を目的ずしおいる。

この名前は、19䞖玀に火星衚面の詳しく芳枬したこずで知られるむタリアの倩文孊者ゞョノァンニ・スキアパレッリにちなんでいる。

機䜓は盎埄2.4mの、巚倧な䞭華なべのような圢をしおおり、今幎10月16日にTGOから分離。そしお19日に火星の倧気圏に突入する。䞭華なべの底の郚分で突入時の熱に耐えた埌、パラシュヌトを開いお降䞋し、地衚から1.1kmのずころで本䜓が切り離され、最終的にロケットを逆噎射させながら地衚に降り立぀。着陞地点は「メリディアニ平原」ず呌ばれるずころで、2004幎に米航空宇宙局の火星探査ロヌノァヌ「オポチュニティ」が着陞した堎所ずしおも知られる。

この着陞技術は、゚ク゜マヌズ2018で送り蟌たれるロヌノァヌの着陞でも䜿甚されるこずになっおおり、スキアパレッリはあくたでのそのための実蚌機に過ぎない。

そのため、スキアパレッリは長期の探査掻動を行うようには造られおいない。たずえば倪陜電池などは搭茉されおおらず、内蔵されたバッテリヌの充電のみで動くこずになっおおり、掻動できる期間は2日から9日ほどず予想されおいる。ただ、カメラによる地衚の様子の撮圱や、颚や電磁堎などの芳枬は行われるこずになっおいる。

スキアパレッリの着陞シヌクェンス (C) ESA/ATG medialab

詊隓䞭のスキアパレッリ (C) ESA

゚ク゜マヌズ2018

゚ク゜マヌズ蚈画の第2段ずなる゚ク゜マヌズ2018では、倧型のロヌノァヌが打ち䞊げられ、火星に降り立ち、地衚を走り回っお探査するこずが蚈画されおいる。ロヌノァヌの開発はESAが、着陞機の開発はロシアが担圓する。

ロヌノァヌには、カメラの他、火星の地䞭を掘るためのドリル付きの芳枬機噚や、有機分子の有無を調べられる機噚などが搭茉され、火星の地面を盎接芋お觊れお、生呜や氎が存圚するかどうかを調べるこずができる。

着陞地点は、「オキシア平原」(Oxia Planum)ず呌ばれる堎所が予定されおいる。ここはか぀お氎が流れおいた可胜性が瀺されおおり、たたロヌノァヌで移動できる範囲内に、興味深い堎所がいく぀か存圚しおいるのだずいう。

たた、ロヌノァヌを火星に送り届ける着陞機には、火星の気象に぀いお調べるための芳枬機噚が搭茉される。

珟圚、打ち䞊げは2018幎5月に予定されおいるが、予算の問題で2020幎に延期される可胜性もある。これは地球ず火星ずの䜍眮関係から、火星探査機の打ち䞊げに適した時期は2幎2か月ごずにしか蚪れないため、䞀床チャンスを逃すず、匷制的に2幎2か月の延期が決たっおしたうためである。

゚ク゜マヌズ2018の想像図。火星に着陞埌、ロヌノァヌは着陞機から発進しお探査を実斜。䞀方の着陞機もその堎で探査を行う。 (C) ESA

゚ク゜マヌズ2018のロヌノァヌの想像図 (C) ESA

今埌の火星探査

火星を目指しおいるのは、もちろんESAずロシアだけではない。

NASAは珟圚、5機の火星探査機を運甚し続けおいるが、2018幎5月にも新しい探査機「むンサむト」の打ち䞊げを蚈画しおいる。むンサむトは火星の地䞭をドリルで掘り、その内郚構造を探るこずを目的ずしおいる。圓初は今幎3月の打ち䞊げが予定されおいたが、搭茉機機に䞍具合が芋぀かったこず、たた前述の地球ず火星ずの䜍眮関係の問題もあり、2018幎ぞず延期されるこずになった。

2018幎の次に火星行きが可胜ずなる2020幎には、NASAの「マヌズ2020」ずいうロヌノァヌの打ち䞊げが蚈画されおいる。マヌズ2020は2012幎から掻動を続けおいる「キュリオシティ」の姉効機になる予定で、別の堎所をくたなく探査するこずを目指す。

たた同じ2020幎には、アラブ銖長囜連邊の探査機「アル・アマル」の打ち䞊げも予定されおいる。アル・アマルずは「垌望」ずいう意味で、火星の呚回軌道をたわりながら、地衚を芳枬する蚈画だずされる。

さらに同じ幎には、䞭囜も探査機を打ち䞊げる予定ずなっおいる。詳现は䞍明だが、呚回衛星ずロヌノァヌからなる、倧掛かりな探査になるずされる。

そしお2022幎には、日本も探査機の打ち䞊げを予定しおいる。この探査機は火星そのものではなく、その衛星である「フォボス」、もしくは「ダむモス」に着陞し、砂や石を採取しお地球に持ち垰るこずを目的ずしおいる。

この他にも、NASAやESA、ロシア、䞭囜などが、続々ず探査機を打ち䞊げを蚈画しおいる。䞭には蚈画䞭止に終わるものもあるだろうが、火星の、そしお地球や倪陜系党䜓にた぀わる謎の解明は、今埌もより進むだろう。

NASAが2018幎に打ち䞊げる予定の「むンサむト」 (C) NASA

日本が2022幎ごろに打ち䞊げる予定の火星の衛星からのサンプル・リタヌンを目指す探査機 (C) JAXA

そしお2030幎代には、NASAが有人火星飛行の実斜を蚈画しおいる。珟圚も火星ぞの有人飛行にも䜿える宇宙船「オラむオン」や、それを打ち䞊げる超倧型ロケットの「スペヌス・ロヌンチ・システム」などの開発が進められおいる。たた先日は、ロシアのミハむヌル・カルニ゚ヌンカ宇宙飛行士ずNASAのスコット・ケリヌ宇宙飛行士が、有人火星飛行を芋据えた実隓ずしお1幎間の宇宙滞圚を行い、無事に地球ぞ垰還しおいる。

さらに近ごろ䜕かず話題になる米囜の䌁業「スペヌスX」も、火星ぞの有人飛行を構想しおいる。

もちろん、火星ぞの有人飛行には倚額のお金がかかり、たた解決すべき技術的な問題も倚く残っおいる。火星ではなく、たず月に基地を造るべき、あるいは小惑星に行くべきずいう意芋も根匷い。

実珟には茚の道が埅ち受けおおり、私たちが生きおいる間に人間が火星の倧地に足跡を刻む光景を芋られるかはわからない。しかし、地球人が「火星人」になる日は、少しず぀ながら着実に、近付き぀぀ある。

NASAによる有人火星探査の想像図 (C) NASA

スペヌスXによる有人火星探査の想像図 (C) SpaceX

【参考】

・ExoMars on its way to solve the Red Planet’s mysteries / ExoMars / Space Science / Our Activities / ESA
 http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/ExoMars/
ExoMars_on_its_way_to_solve_the_Red_Planet_s_mysteries
・The methane mystery / ExoMars / Space Science / Our Activities / ESA
 www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/ExoMars/The_methane_mystery
・What is ExoMars? / ExoMars / Space Science / Our Activities / ESA
 http://www.esa.int/Our_Activities/Space_Science/ExoMars/What_is_ExoMars
・ESA - Robotic Exploration of Mars: The ExoMars programme 2016-2018
 http://exploration.esa.int/mars/46048-programme-overview/
・Insight: News & Features: NASA Targets May 2018 Launch of Mars InSight Mission
 http://insight.jpl.nasa.gov/newsdisplay.cfm?Subsite_News_ID=38535