欧州が開発を進める次䞖代ロケット「アリアン6」。怜蚎䞭の玆䜙曲折を経お、今幎1月に蚭蚈が完了し、いよいよ開発が本栌化する。

アリアン・ロケットを運甚するアリアンスペヌスは珟圚、䞖界の商業衛星打ち䞊げ垂堎においお玄半分のシェアを握っおいるが、米囜スペヌスXの「ファルコン9」ロケットが、その安さを歊噚に、埐々にシェアを広げ぀぀ある。たた䞖界各囜でも、今埌数幎のうちに続々ず新型ロケットが登堎し、アリアン6は生たれる前から倧きな課題を背負わされおいる。

果たしおアリアン6は、この難題を解決できる「アリアドネヌの糞」ずなれるのだろうか。

アリアン6の想像図 (C) ESA

アリアン6は2020幎の初打ち䞊げを目指す (C) ESA

アリアドネヌの糞、みたび

ギリシア神話によるず、地䞭海に浮かぶクレヌテヌ島にはか぀お、ミヌノヌタりロスずいう怪物が棲んでいた。この怪物に脅かされおいたアテヌナむ囜のテヌセりス王はこの怪物を倒すこずを決意し、いざクレヌテヌ島に乗り蟌む。しかしミヌノヌタりロスは脱出䞍可胜な迷宮の䞭におり、テヌセりスが生きお垰れる保蚌はなかった。

そこに、テヌセりスに惚れた、クレヌテヌ島の王の嚘アリアドネヌが珟れ、圌に糞を手枡す。迷宮の入り口に糞をくくり぀けお垂らしながら進み、垰りはその糞を蟿るこずで、迷わずに垰っおこられるのではないかずいう機転のきいたアむデアだった。そしおテヌセりスは芋事ミヌノヌタりロスを倒し、無事に迷宮から抜け出すこずに成功したのだった。

――この「アリアドネヌの糞」の䌝説や蚀葉は、混迷から抜け出したり、難問を解決したりするため鍵ずいう意味で、さたざたなずころで䜿われおいる。

それは宇宙開発も䟋倖ではない。1960幎代、英囜やフランス、西ドむツなどの欧州各囜は、お互いに協力しお倧型ロケットを開発するずいう蚈画を立ち䞊げたが、足䞊みがそろわず、䞀切の成果を残せないたた倱敗に終わる。しかしフランスは諊めず、仕切りなおしの蚈画ずしお「アリアン」ロケットの開発蚈画を立ち䞊げる。アリアンずはアリアドネヌのフランス語衚蚘「Ariane」(アリアヌヌ)を英語読みしたものである。

ロケットなどの乗り物に神話に由来する名前を付けるこずは欧米ではある皮の慣䟋であり、たた「アリアヌヌ」自䜓、フランスでは人名ずしおごく普通に䜿われるものではあったが、その背景には、欧州共同でのロケット開発の倱敗ずいう苊い経隓から抜け出したいずいう意図があったずいわれおいる。

このアリアン・ロケットの開発は成功し、1979幎に「アリアン1」が誕生した。翌1980幎にはアリアンを運甚するための「アリアンスペヌス」ずいう䌚瀟が蚭立され、それたで米囜が幅を利かせおいた人工衛星の商業打ち䞊げ垂堎に参入した。ロケットも「アリアン2」、「アリアン3」ず改良が重ねられ、1988幎から「アリアン4」が登堎。アリアン4は性胜、成功率ずもに申し分ない傑䜜機で、アリアン・ロケットは䞖界で最も成功した商業ロケットずなった。

そしお1996幎には最新型の「アリアン5」ロケットが登堎し、珟圚たでに84機が打ち䞊げられ、70機の連続成功を達成。アリアンスペヌスも静止衛星の商業打ち䞊げ垂堎で玄半分の垂堎占有率(シェア)を維持し続けるなど、順颚満垆な歩みを続けおいる。

アリアン4ロケット。116機が打ち䞊げられ、そのうち113機が成功ずいう奜成瞟を残し、2003幎に匕退した。 (C) ESA

アリアン4の埌継機ずしお登堎したアリアン5。これたでに84機が打ち䞊げられ、70機の連続成功を続けおいる。 (C) Arianespace

だが近幎、その颚向きが倉わり぀぀ある。2010幎に米囜の「スペヌスX」が送り出した「ファルコン9」ロケットが、アリアン5の3分の1ほどずいう安さを歊噚に埐々に勢力を䌞ばし始めたのである。珟圚では、ロシアのロケットの信頌性䜎䞋も盞たっお、垂堎はアリアンずファルコン9でほが二分されおおり、さらにこのたたアリアンのも぀シェアさえも䟵食する可胜性があった。

新たに立ちふさがったファルコン9ずいう怪物を迎え撃぀ため、䞉床目のアリアドネヌの糞ずなるべく、次䞖代ロケット「アリアン6」の怜蚎が始たった。

䜎䟡栌を歊噚に勢力を䌞ばし぀぀ある米スペヌスXのファルコン9ロケット (C)SpaceX

アリアン6

もっずも、ファルコン9が登堎したからアリアン6の怜蚎が始たった、ずいうのは正確ではない。欧州宇宙機関(ESA)は2004幎から、圓時、最倧の競争盞手だったロシアや䞭囜のロケットに察抗するために「次䞖代ロケット」(Next-Generation Launcher)ずいうアリアン5の埌継機の怜蚎を続けおいた。その埌状況が倉わり、ファルコン9が䞻たる敵ずなったが、競争盞手に勝぀ためずいう意図は倉わっおいない。

この次䞖代ロケットがアリアン6ずいう名前で呌ばれ始めたのは2012幎ごろからで、圓時は第1段ず第2段に固䜓ロケット、第3段に液䜓ロケットをも぀「PPH」ずいう構成が怜蚎されおいた。珟圚のアリアン5は液䜓ロケットを第1段ず第2段にもち、その䞡脇に固䜓ロケットを補助ブヌスタヌずしおも぀構成をしおいるため、このアリアン6の構成は倧きな倉化であり、挑戊でもあった。これには第1段ず第2段を基本的に同じ぀くりにするこずで、倧量生産による䜎コスト化を図るずいう考えがあった。ロケットの完成予想図はいく぀か倉わったものの、しばらくはPPH構成は維持された。

圓時、この構成は「トリプル・セノン」ずも呌ばれおいた。これは7幎で開発し、静止衛星の打ち䞊げ胜力が7トン、そしお打ち䞊げコストが7000䞇ナヌロずいう、7尜くしであったこずに由来する。

アリアン6のPPH案。第1段ず第2段に固䜓ロケット、第3段に液䜓ロケットをも぀。 (C) ESA

CNESが怜蚎しおいたアリアン6のPPH案のひず぀。ESA案ず構成は同じだが、第1段の構成が異なる。 (C) CNES

ずころが2014幎、アリアン5の補造を行っおいる欧州の航空宇宙倧手「゚アバス」ず、゚ンゞン・メヌカヌずしお知られる「サフラン」が、共同でロケット開発䌚瀟「゚アバス・サフラン・ロヌンチャヌズ」(ASL)を立ち䞊げるず発衚。それたでESAやフランス囜立宇宙研究センタヌ(CNES)ずいった囜の機関が䞻導しおいたアリアン6の怜蚎を、産業偎が䞻導する圢に改められるこずになった。

これは非垞に倧きな倉化、決定だった。アリアン5たでは、ESAやCNESが開発を䞻導し、ESAに加盟しおいる欧州各囜の䌁業に察し、その出資比率に合わせお郚品の発泚を分ける、「ゞオリタヌン」(GeoReturn)ずいう方法がずられおいた。これは安党、確実に開発でき、ESA加盟囜すべおがロケット開発で最うずいう利点はあったものの、開発スピヌドは遅く、たたロケットに採甚する技術や郚品を、玔粋に技術や性胜の高さやコストの安さで遞べないずいう欠点もあった。

ただ1瀟でファルコン9を開発したスペヌスXず察峙しおいくこずを考えるず、これらの欠点は臎呜的な匱みずなる。そもそも産業偎からは、ESAやCNESの考える「トリプル・セノン」案では「打ち䞊げ胜力が足らない䞊に䟡栌が高い」、぀たり垂堎で勝おないずいう意芋が出おおり、危機感を匷めた産業偎が立ち䞊がり、ロケットの開発䜓制から蚭蚈に至るたで、倧きな倉化が起こるこずになったのである。

その結果、アリアン6ではゞオリタヌンに原則的にこだわらない開発、補造が行われるこずになった。そしおASLが出した案は、珟圚のアリアン5ず同じ第1段ず第2段に液䜓ロケットを、補助ブヌスタヌずしお固䜓ロケットずいう構成をもち、打ち䞊げ胜力も維持、その䞊で打ち䞊げコストを半額にするずいうものだった。

その埌も怜蚎が続けられる䞭で、第1段ず第2段の盎埄や、ブヌスタヌの圢が倉わるずいった倉化はあったものの、構成やコスト目暙はこれで定着し、今幎1月には蚭蚈ず、補造に向けた産業偎の準備が完了。これからいよいよ、実際の郚品を造ったり詊隓をしたりず、開発が本栌化する。順調に進めば、2020幎にも1号機が打ち䞊げられるこずになっおいる。

産業偎が䞭心ずなっお再怜蚎されたアリアン6。アリアン5ず同じ、第1段ず第2段に液䜓ロケット、補助ブヌスタヌに固䜓ロケットを䜿う。 (C) ESA

アリアン6の珟時点での想像図。巊の図ず比べ、第1段、第2段の盎埄が倪くなり、固䜓ブヌスタヌの圢も倉わっおいる。 (C) ESA

(埌線に続く)

参考

・Airbus Safran Launchers: a highly promising first year
 http://www.airbusafran-launchers.com/wp-content/uploads/2016/01/ASL-1-year.pdf
・Ariane 6
 https://airbusdefenceandspace.com/our-portfolio/space-systems/ariane-6/
・Ariane 4 / Launchers / Our Activities / ESA
 http://www.esa.int/Our_Activities/Launchers/Ariane_42
・Airbus, Safran Form Space Launch Joint Venture | AWIN ONLY content from Aviation Week
 http://aviationweek.com/awin-only/airbus-safran-form-space-launch-joint-venture
・Airbus Group and Safran Launch Joint Venture
 http://www.airbusafran-launchers.com/wp-content/uploads/2014/12/PR-Airbus-Safran-Joint-Venture-EN.pdf