――これに絡んでもう1つ。以前は多くのメーカーが「ADASは○○のセンサがあれば出来る」というメッセージでしたが、昨今はどのメーカーも「○○と××と△△を組み合わせてADASを実現する」という方向になっています。安全面から言えば複数のセンサを組み合わせたほうが安全なのは判りますが、その分価格も高くつきます。2020年に自動運転車が公道を走るとき、やはりその自動運転車は複数のセンサの組み合わせになるのでしょうか? それともどれか特定のセンサで、ということになるのでしょうか?

Amrit:私自身は複数のセンサが搭載されると思う。センサの価格もエレクトロニクスの価格もどんどん下がっている。だから、2020年にはもっとリーズナブルな価格で利用できると思う。

――そのエレクトロニクスの低価格化と高性能化はプロセス微細化に助けられてきた部分もあるのですが、すでに先端プロセスは微細化がほぼ止まりつつあります。自動車向けはまだ相対的に微細化に余裕がありますが、2020年ころにはこちらも微細化の壁に突き当たらないでしょうか?

Amrit:確かに言うとおり今は55nmあるいは40nmプロセスを使っていて、このあと28nmに移行するわけだが、それは技術的な問題ではない。コマーシャル的な問題だ。具体的に言えばフラッシュメモリの容量だ。40nmから28nmへの移行は、より高いコンピューティング性能の必要性から行われるだろう。ただ28nmより微細化が進むかどうか、は組み込みフラッシュによる。我々はR-CarでARMのSoCを提供しており、現在第2世代になっているのだが、ハイエンド/ミドルレンジ/ローエンド/スーパーローエンドのラインアップを用意したが、一番要求が高かったのが最上位だった。これには我々も驚いた。通常、ミドルレンジが価格面で一番最適になっており、ハイエンドにはプレミアがついているからだ。だからハイエンドの需要はそれほど高くないと思っていた。そして、前の世代のハイエンドが次の世代のミドルレンジとほぼ同じ性能になる。一体どこからこのハイエンドに対する需要が出てくるのか判らないのだが、必ずどこからか来る。だから業界は16nm FinFETに移行しつつある。ただ、その後どうなるかは私にも判らない。

実際のところどうなるかは、技術的な話からではなく、コマーシャル的な角度あるいはビジネス的な角度からの要求次第だ。要するにユースケースがどうなるか次第だと思う。ただ、現在言えるのは、世代が変わるごとに顧客はハイエンドを要求するということだ(笑)。米国は特にその傾向が強い。

一方Deep Embeddedの正解で言えば、どのような方程式をどのようなアルゴリズムを利用して解くのかによって変わってくる。ただ一般に、より処理性能があるほど良い結果が得られる。そして解くべき問題の大きさも年々大きくなってゆく。

――確かにカメラの解像度はどんどん上がってますね

Amrit:そうした問題は確かに存在する。これがより高い処理性能を要求する形だ。もちろんルネサスからすれば、より高性能のプロセッサを売れるわけで幸せだがね(笑)。

――加えて機能安全などではより多くのコードを必要とすることから、必要とするメモリも増えますね

Amrit:その通り。さらに機能安全に向けたハードウェアも要求される。より多くの自己診断機能とかもだ。性能だけでなく、より堅牢で安定なプラットフォームが求められる。特に機能安全に関しては、それをソフトウェアで提供するかハードウェアで提供するかは、どのレベルの規格に対応するかで変わってくるので、我々は両方を提供できるようにする。

――ここで確認ですが、この機能安全関係はREAのチームが対応しているのですか? それともRenesas Globalでしょうか?

Amrit:機能安全に関係する部分はRenesas Globalになる。