東京工業大学は9月4日、半金属であるビスマスを薄膜化すると、その電気的な性質を半導体に変えられることを実証したと発表した。

同成果は東京工業大学大学院理工学研究科の平原徹 准教授、東京大学の長谷川修司 教授、自然科学研究機構分子科学研究所の田中清尚 准教授、木村真一准教授(現大阪大学教授)、お茶の水女子大学の小林功佳 教授らの共同研究によるもの。9月3日に米国物理学会誌「Physical Review Letters」で公開された。

ビスマスはシリコンなどの半導体中の電子より高速に移動できるディラック電子を有している。1960年代にこのビスマスを薄膜にすることで半導体化できることが理論的に予想されていたが、実験ではこれまで確認されていなかった。

今回、同研究グループは分子科学研究所の放射光施設UVSORで、偏光可変の低エネルギー角度分光電子分光装置を用いて、高品質のビスマス薄膜を観測。その結果、ビスマス薄膜が半導体になっていることが確認された。また、理論では予想されていなかった表面や界面の電子でが関係した新しい現象も発見したという。

角度分解光電子分光法の原理

同研究グループは今回の成果について「今後はビスマス内部の高移動度のディラック電子を利用した高速デバイスの開発、さらにビスマスの表面や界面に存在する電子を利用した極薄ナノデバイス開発という応用研究へと進展することが期待できる。」としている。