ここまで全競技の表彰チームをお伝えしたわけだが、そのほかに以下の部門も表彰もお伝えしておこう。IPA(独立行政法人 情報処理推進機構)賞は、モデル設計に特筆すべき点があるチームに対して、ETロボコンを講演しているIPAが贈る賞だ。モデル設計が非常に精密にできることが評価され、2014年は「Champagne Fight」に贈られた。

そしてTOPPERS賞は、ITRON仕様の技術開発成果をベースに、組み込みシステム構築の基盤となる各種ソフトウェアをオープンソースとして開発して公開することで、組み込みシステム技術と産業の振興を図ることを目的とした「Toyohashi OPen Platform for Embedded Real-time Systems(TOPPERS)プロジェクト」が贈る賞。ETロボコンのNXTWayやNXTrikeには、TOPPERSのリアルタイムOSが使用されているのだ。

受賞のポイントは、モデルの設計が優れているだけではなく、しっかり実装できていることで、今回はモーションセンサを通してPCでジェスチャーを画像認識して、BluetoothでNXTWayをコントロールするという仕組みをきちんと実装したという点などが評価され、「もっと、とってきなさい。」が受賞した(画像53)

そして若手奨励賞は、将来性のある若手、もしくは学生に送られる賞で、沖縄の専門学校生で構成されたD部門Pクラスの総合9位「壷川モーターズ(国際電子ビジネス専門学校 組込みシステム科)」が受賞した(画像54・55)。同チームのリザルトタイムの合計は-10秒であり、マイナスタイムは立派なものである。

  • IPA賞:Champagne Fight
  • TOPPERS賞:もっと、とってきなさい。
  • 若手奨励賞:壷川モーターズ

画像53(左):もっと、とってきなさい。のメンバー。なかなか珍しいが、ご夫婦とのことである。チーム名の由来は確認できなかったが、得点を取ってこい、とかであろうか? 画像54(中):壷川モーターズのメンバー。チーム名の由来は、学校が那覇市壷川にあることと、自動車関係の仕事に就きたいことだそうである。画像55(右):壷川モーターズのNXTWayの走行シーン

それでは最後に、2015年以降から導入予定のEV3について。まだ仮のモデルということだが、今回、EV3のD部門PクラスとAクラス用のそれぞれの走行体が披露され、実際に走りも披露された(画像56~59)。EV3によるPクラス用の平行2輪型走行体はおそらく「EV3Way」などと呼ばれるものと思われ、Aクラス用のトライク型走行体は「EV3Trike」などと呼ばれると思われる。個人的には、EV3Way(仮)はもっとゴツくなるかと思ったが、予想以上にスッキリしていた。一方、EV3Trike(仮)の方は、元々のNXTrikeもゴツイので、あまり差はない感じだ。

性能的な部分も少し紹介しておくと、CPUの性能は6倍で、メモリも256倍。SDカードをサポートしており、ポートも増えているという具合で、いうまでもないが、より複雑で大きなプログラムも組みやすくなるし、より高度なことを行えるようにもなるはず。プログラムの変更なども容易になるとのことだ。

画像56(左):EV3Way(仮)を正面から。画像57(右):EV3Way(仮)の背面

画像58(左):EV3Trike(仮)を前面から。画像59(右):EV3Trike(仮)を背面から

そしてEV3Way(仮)とEV3Trike(仮)の走行シーンがこちら(動画1)。なお、EV3Trike(仮)の動きにギクシャクした感じが目立つが、これはNXT用のプログラムを流用しているためで、本来の走りというわけではない。どちらにしろ、どれだけ性能を引き出せるかは、各チーム次第なので、2015年の地区大会やCS大会が興味深いものとなるだろう。

もう少し詳しく説明すると、動画の中でも解説がなされているのだが、EV3用のTOPPERSのリアルタイムOSがCS大会の1週間ほど前にだいぶ形になってきたということで、少なくともEV3Way(仮)の方は、ほぼNXTWayと遜色のない走りを見せるようになっている。

というのも、EV3Way(仮)には、NXTWayのダミーカー(PクラスとAクラスはどちらも出場チーム数が奇数のため、相手チームがいない4組目が走るターン4において仮に走る走行体)用のプログラムが移植されているからだそうだが、少しゆっくり目だがかなりスムーズ。一方のEV3Trike(仮)はサンプルプログラムを利用しているということで、かなりぎこちない感じで走っていた。なお、EV3用の開発環境については、CS大会時点での話しだが、急ピッチで開発が進んでおり、2015年シーズンからの利用が可能になるとしている。

動画
動画1。EV3Way(仮)とEV3Trike(仮)の走行の様子

また、2015年大会では引き続きNXTの利用も可能だ。2014年にNXTを購入したばかりのチームが、1年で使えなくなる心配はないというわけだ。ただし、これでNXTのラストシーズンとなる。長年の活躍はご苦労様というところで、各チームにはNXTに有終の美を飾らせてあげてほしい。ちなみに性能差があるため、実際の競技ではNXTとEV3の表彰は、RCXとNXTが混走した2009年と同様に別扱いになるものと思われる。

どちらにしろ、2015年のETロボコンに関する発表会が2月13日に行われるので、近い内にまた2015年のETロボコンのルールなどをお伝えできると思う。それから、毎年行っているインタビューに関しては、前述したようにA部門の優勝チームであるmirai craftに対して行わせてもらった。別の記事として後ほど掲載するので、そちらもお読みいただきたい。