横浜国立大学は2月4日、光子の発光と吸収だけで量子通信や量子計算に用いられる量子テレポーテーションを可能にする新原理を実証したと発表した。

同成果は、同大大学院 工学研究院の小坂英男教授、新倉菜恵子研究員らによるもの。詳細は、米国物理学会誌「Physical Review Letters」のオンライン版に掲載される予定。

今回、特殊な光源や検出器に頼ることなく、量子メモリ素子となるダイヤモンド中の単一欠陥の電子に内在する量子もつれを利用し、発光と吸収という自然現象だけで光子と電子の量子もつれを検出した。具体的には、量子もつれ生成は発光した光子と残った電子が自然にもつれるように、また、量子もつれ検出は光子と電子がもつれて吸収されるように工夫を行った。このような自然現象の利用で、特別な量子操作の必要もなく量子テレポーテーションによる量子中継が行えることを実験によって明らかにしたという。

なお、同方式では、光ファイバを伝わって量子ノードに到達した光子を無駄にすることなく中継に利用することができる。つまり、中継ごとの失敗確率を原理的にゼロに抑えることができる。その結果、光ファイバ中で光子がなくなるのを避けるために中継区間を可能な限り短くすることで、通信レートを最大限まで上げることが可能になる。仮に光子送信レートを毎秒1Gビットとすると、中継区間を50kmに抑えたとしても1000kmの量子通信路一回線で毎秒100Mビットの情報が送信できるとしている。

今回の結果は、量子中継の基本原理である量子テレポーテーションを極めて単純な原理で実現し、電子の量子状態を光子が届かない遥か遠方に高速かつ確実に再生できることを示唆するもので、物理法則で安全性の保証された量子通信網の飛躍的長距離化・高速化に道を開くものと期待されるとコメントしている。

ダイヤモンドを用いた電子と光子の量子もつれ検出の概要。ダイヤモンドに内在する量子もつれ機構を利用し、電子と光子の量子もつれを検出。ほぼ完全な量子もつれ検出を実験で実証した