IBMは8月7日(米国時間)、100万個のプログラム可能なニューロン、2億5600万個のプログラム可能なシナプス、毎秒毎ワット460億のシナプティックオペレーションというスケールを達成するニューロシナプティックコンピュータチップを発表した。
現在のコンピュータを、人間の脳のコグニティブな能力、および超低消費電力と比較すると、膨大な格差がある。今回、この格差の溝を埋めるため、過去に存在したことがないまったく新しいニューロサイエンスにヒントを得て、スケーラブルで効率的なコンピュータアーキテクチャを開発したという。同チップのアーキテクチャは、4096個のデジタル、分散ニューロシナプティックコアのオンチップ2次元メッシュネットワークを有している。それぞれのコアモジュールは、メモリ、コンピュテーション、コミュニケーションを統合し、イベント駆動型、並列、耐故障性という形で動作する。
さらに、システムを1チップの壁を越えてスケールさせるため、ボードに並べられたとき、隣り合ったチップがお互いにシームレスに接続できる、ニューロシナプティックスーパーコンピュータの将来の基礎を築いている。また、IBMはスケーラビリティを実証するため、1600万のプログラム可能なニューロンと、40億のプログラム可能なシナプスを有する16チップシステムを公開した。
なお、同チップは、54億個のトランジスタから成り、これまで製造された中で最大のCMOSチップの内の1つであるという。既存のマイクロプロセッサと比べてはるかに少ない70mWというわずかな消費電力で作動しながら、郵便切手のように小さく、視覚や聴覚、マルチ感覚性アプリケーションを可能にすることにより、科学、技術、ビジネス、行政、社会に変化をもたらす可能性があるとしている。チップの製造には、高密度オンチップメモリと電力漏れの少ないトランジスタからなるSamsung Electronicsの28nmプロセス技術が使われている。また、プロセス技術、ハイブリッド・同期非同期デザイン手法、新たなアーキテクチャの組み合わせにより、既存のマイクロプロセッサより4桁近く小さい20mW/cm2の電力密度を達成している。
さらに、IBMでは、同チップ技術の応用技術として、消費電力、容積、速度による制約を受けているモバイルデバイスにマルチ感覚性のニューロシナプティック処理の統合、新しいイベント駆動型センサのチップへの統合、ニューロシナプティックシステムによって促進されるリアルタイムマルチメディアクラウドサービス、そして複数のチップをボード上に載せ、最終的に百兆超のシナプスにスケールするシステム、ニューロシナプティックスーパーコンピュータの開発に取り組んでいる。