IBMは7月10日(米国時間)、クラウド・コンピューティングならびにビッグデータの拡大する需要への対応に必要な半導体技術の開発プログラムに向け、今後5年間で合計30億ドルを投資すると発表した。
研究プログラムは2つあり、1つ目は、7nmプロセス以降の半導体デバイスを実現する際の物理的課題の解決を目指すもので「7 nanometer and beyond」と呼ばれる。2つ目は、シリコン半導体によるCMOSプロセスの限界を見据えた、ポストシリコン時代におけるシリコン代替技術の開発としている。
これらの研究には、同社の米国ニューヨーク州アルバニーとヨークタウン、カリフォルニア州アルマデン、欧州のIBMの研究員とエンジニアが取り組むとしており、カーボン・ナノエレクトロニクスやシリコン・フォトニクス、次世代メモリ技術、量子コンピューティングならびにコグニティブ・コンピューティングを支えるアーキテクチャなどに投資を行っていく予定。
また、今後の30年以上にわたるコンピューティングの先駆者として、ナノテクノロジー関連と量子コンピューティングの2つの基礎科学に関する研究にも投資を行っていくとしており、すでに量子コンピュータについては、超伝導キュービットを3つ使ってパリティ・チェックの実験的な実現を実証したとしているほか、ナノテク、神経科学、スーパーコンピュータを組み合わせることで、同社とパートナーの大学は今までにない非ノイマン型アーキテクチャ、新しいプログラミング言語とアプリケーションを含むエンド・ツー・エンドのエコシステムを開発したとしており、これによりコンピューティング・システムが脳の演算効率、大きさや電力使用量を模倣することを可能にするとしている。ちなみに、長期的な目標としては、1kWの電力を消費し、2lより少ないスペースを占有する、100億のニューロンと100兆のシナプスを有するニューロシナプティック・システムを開発することだとしている。
なお同社は、大学の研究員と共同で半導体業界向けに未来のテクノロジーを探求し、開発するため、引き続き資金提供を行うとしており、NanoElectornics Research Initiative(NRI)、the Semiconductor Advanced Research Network(STARnet)、the Global Research Consortium(GRC) of the Semiconductor Research Corporationなどと官民連携パートナーシップを通じて、大学における研究を引き続き支援していくとしている。