NVIDIAは7月16日、都内で同社GPUに関するカンファレンス「GPU Technology Conference Japan 2014(GTC Japan 2014)」を開催した。基調講演には、同社FellowのDavid Kirk氏が、GPUに関する最新トピックスならびにGPUを活用して切り開かれる未来の姿の説明を行った。
CUDAが開発されて以降、GPUは単に画像を描画するだけの存在ではなくなり、さまざまなソリューションを実現する存在となり、その適用範囲も年々拡大を続けている。実際、2010年に開催された第1回目となるGTC Japanの参加者は480名程度であったが、今回のGTC Japanは約1500名が参加し、その業種も家電、自動車、通信、光学機器、ソリューションベンダなど幅広いものとなっているという。
「今やCUDAは、組み込み、自動車、タブレットやスマートフォン、そしてスーパーコンピュータと、ありとあらゆる場所で活用されるようになってきた。これまでのCUDAのダウンロード数は250万を超し、世界で1000以上の大学がCUDAを教える授業を開催する予定だ」と同氏はCUDAとそれによって実現されるGPUコンピューティングの広がりを強調する。
また、そんなCUDAの進化を最新アーキテクチャである「Kepler」が後押しをしていることも強調。ARM64ビットアーキテクチャとGPUを組み合わせたHPCサーバが、従来のx86サーバとGPUの組み合わせ以上に高い電力対性能を実現するとするほか、組み込み向けモバイルスパコンボード「Jetson TK1」の活用により、組込機器からスパコンまでCUDAがカバーできるようになったとする。
こうしたGPUの活用はエンタープライズ分野にも拡大している。NVIDIAでは「エンタープライズ仮想化2.0」と呼んでおり、「GRID」と呼ばれるデスクトップ仮想化とGPUコンピューティングを組み合わせることで、快適な仮想化環境の構築が可能になる一連のソリューションを提供しているが、同日、GTC Japanの開催に合わせ、日本のユーザーが日本語のユーザーインタフェース環境でGRIDを試すことが可能な仮想デスクトップ環境の無償トライアルの国内提供を開始したことも明らかにした。
http://www.nvidia.co.jp/object/trygrid-jp.htmlよりユーザー登録を行い、「GRID Wrokspace」をダウンロードして起動し、接続先に「Asia」を選択することで、仮想デスクトップ環境にアクセスすることができ、あらかじめ用意されているブラウザ上での3D表現デモやハイエンドグラフィック処理、シーメンスPLMソフトウェアの3D CADツール「Teamcenter」を体験することもできる。デモ以外の個人のデータについても、使いたいファイルをドラッグ&ドロップすることで使えるようになるとする。
また、こうしたGPUを活用したデスクトップ仮想化により自動車分野では、これまでの車体デザインや製造などの部門だけでなく、営業がタブレットを活用してバーチャルショールーム的な使い方や、ユーザー個々人の好みに応じたカスタマイズの支援といった、販売でのGPUの活用も進むことが期待できるとする。
さらに自動車分野では、ドライバアシスタンスにGPUを活用することで、歩行者検出、視覚モニタリング、車線逸脱、クルーズコントロールといったコンピュータビジョンベースの各種処理を1システムで実現できるようになるとするほか、将来的には、自動車が自らの意思で駐車場の空きスペースを探し、そこに駐車し、ドライバが呼べば、その場まで自動運転でたどり着く、といったことも小型のシステムで実現できるようになるとした。
このほか同氏は2016年に登場する予定である「Pascal」では、CPUとGPUの接続で生じるボトルネックの解消が期待できる「NVLINK」や、TSVを用いた高バンド幅の「High Bandwidth Memory(HBM)」を活用することで、従来のPCI Express(PCIe)カード製品の3分の1サイズで、2~4倍のメモリバンド幅とサイズ、およびPCIeの5倍から12倍の性能を実現することが可能になるとし、「Pascalを用いて何をするかを、パートナーなどと一緒に考えて行きたい」と述べ、「さあ、すごい未来を世界に見せよう!」と会場に詰めかけた聴講者たちにメッセージを送っていた。
なお、Jetson TK1はコンピュータビジョンをターゲットにした開発ボードで、日本ではロボットや自動車、医療、セキュリティ、防衛などの分野での活用が期待できるとしている。国内の発売はオリオスペックが担当しており、価格は2万4000円(税別)となっている。