本当にコンピュータの性能進化が進めばヒトを凌駕できるのか?

そして少し安心したいところもあったのだろう、「コンピュータが人間を超えてしまう世界は文系の人間としては、嫌な世界です」とまったく歓迎していない(いや、理系も体育会系も誰であっても人なら普通は歓迎しないと思う)若林編集長が会場の空気を読んで、現時点でヒトがコンピュータに対してどんな部分で勝っているのかという話に。現状でヒトが勝てる代表として、パターン認識が紹介されたが、ほかにもいくらでもあるとしたが、しかしここでもやはり松田博士が「最終的にはすべて勝てなくなりますよ」と厳しい未来を突きつける。実際、Googleが実験として、YouTubeの動画を見せまくって、人工知能が「ネコ」を認識したという話は有名だ。今後、それがもっと強力になっていくのである。

ちなみに松田博士、文章で書いていると、あまりキャラクターを伝えにくいので、明るい未来を創造していない冷徹な人物と思われるかも知れないが、実はその真逆。トークショーを聞いていて、失礼ながら、変なオジサンという印象を受けた(笑)。実は、松田博士自身もマインド・アップローディングしてコンピュータ内の超知能になりたいのだそうだ。その上で、世界征服をしたいそうである。もしかしたら、特異点的な強い人工知能よりも要注意人物かも知れない。

なお、先程、松田博士は2045年に日本が米国に人工知能研究で負ける可能性があるといったが、決してそれを望んでいるわけでも受け入れるつもりもないという。米国という国家は、一般市民1人1人はそうではないと信じたいが、国家としては、自国のためなら何をやってもいいという理論が当たり前で、極端な話、米国人以外なら殺してもいい、というのが湾岸戦争や対テロ戦争などでも見て取れるわけで、実に暴力的で独善的な一面を持つ国家である。そんな国家が、特異点的な強い人工知能を開発してしまったら、どんなことになるのかわかったものではない。松田博士もそれは避けたいので、自分がコンピュータの中に入って超知能となるのが「いい未来でしょう」としている(笑)。松田博士自身は絶対にヒトラーのような他民族の根絶やしを企てるような独裁者とかにはならない自信があるそうで、ひっそりと隠れて、まったく世の中に出ないという。

そしてまたGoogleの話に戻るのだが、編集長は米政府自体が持つよりは、Googleが特異点的な強い人工知能を持っている方が安心できそうだがどうなのかと話を振ると、確かに米政府よりはマシだというが、やはり1企業なので、CEOのラリー・ペイジがやるといったらやれてしまうわけで、そこにまた米政府とは違う危険性があり、きちんと倫理委員会などを作るべきだとする。また、先程も話が出たが、Googleが国家を超えるのは必然で(現在もそれに近い状況だと思うが)、数10年後には軍隊だって持つ可能性もあるだろうとしている。

松田博士は、基本的に一神教の宗教を信仰している人たちは、ほかの神を認めない、つまりは自分たち以外の文化を認めない的なところがあるので、そういう人たちには特異点的な強い人工知能を開発してほしくないとした。