東北大学とNECは2月12日、スピントロニクス論理集積回路技術を応用した無線センサ端末向けマイコンを開発し、従来技術と比較して消費電力を1/80まで削減できることを実証したと発表した。

詳細は、2月9日~13日に米国サンフランシスコで開催されている「国際固体回路会議(ISSCC) 2014」にて発表された。

現在、様々なセンシングシステムから集められる大量のデータを分析し、システムの異常や機器の故障など、現状を迅速に把握し将来の予測に役立てる技術への期待が高まっている。社会インフラの維持管理を行う際には、インフラの状況に関するデータを常時収集・送信し、長期間安定して稼働する高性能な無線センサ端末が求められる。無線センサ端末の高性能化には、処理中枢であるマイコンの高性能化が必要だが、消費電力が増加するといった課題がある。

今回、マイコン内の論理回路とメモリを不揮発化することで、マイコン全体の待機電力を削減し、高性能と省電力を両立させた。同マイコンを無線センサ端末に適用することで、消費電力を大幅に抑え、電池寿命を約10倍まで延ばしながら高度なデータ処理が可能となるという。

具体的には、論理回路の中にある電源制御回路や複数の機能ブロックにスピントロニクス素子を適用した。これにより、待機電力を最小限に抑えながら、高速な電源制御を実現。必要な機能ブロックの電源オン状態への移行は、約120ナノ秒と極めて短時間でできると同時に、小まめな電源オフが可能となり、不要な電力を削減している。また、回路の中で消費電力の大きいレジスタ内の不揮発素子への書き込みに対し、電源オフ状態に移行する直前に書き込みを命令するCPU回路を新たに開発した。さらに、書き込み前後のデータが同一の場合には上書き処理をキャンセルするといった緻密な制御を行い、不要な書き込みによる消費電力の増加を抑制している。

同技術によるマイコンを試作して実験を行ったところ、消費電力を従来比1/80に削減することに成功した。90nm CMOS回路と3端子MTJ素子を組み合わせた集積回路チップを作成し、センサ端末での使用を想定したデータ収集と演算処理を実施したという。

両者は、同技術が高性能・低消費電力かつメンテナンスの頻度を大幅に低減できる無線センサ端末の実現に寄与し、高度なセンサを用いたビッグデータの活用を促進していくとコメントしている。