バイオエタノールとは、生物由来の資源(バイオマス)から生産される、ガソリンなどの代替となる液体燃料。太陽エネルギーを利用して育つ植物を原料に生産でき、枯渇することのない「再生可能エネルギー」として、次世代エネルギーの候補の1つに挙げられる。対概念は、化石燃料である石油や天然ガスから生産される合成エタノール。

化石燃料の起源については諸説があるが、最も有力な生物起源説では、100万年以上地中に堆積した生物遺骸が、地圧・地熱などで炭化水素の液体やガスに変化したものとされる。これを燃焼させると、地中深くに埋蔵された膨大な二酸化炭素を、僅かな期間のうちに大気中に再放出することになり、地球温暖化などの気候変動の原因になると危惧される。

一方、バイオエタノールは、大気中の二酸化炭素を取り込んで植物が光合成した有機物が原料であり、燃やしても二酸化炭素が増えることはない。この特徴を「カーボンニュートラル」と呼ぶ。そのため、京都議定書の規制対象外で、化石燃料から切り替えた分だけ、温室効果ガスの削減と認定される。

現在活用されているのは、でんぷんや糖を豊富に含む穀物を原料とする第一世代のバイオエタノールだ。第一世代バイオエタノール先進国はアメリカとブラジルで、それぞれトウモロコシとサトウキビを主原料とし、生産も消費も盛んである。

トウモロコシはバーボンウィスキー、サトウキビはラム酒の原料であることからも分かるように、その製造工程は蒸留酒生産と重なる。具体的には、バイオマスをグルコースなどの単糖に分解後、発酵させた液を蒸留、その後脱水工程を経てエタノール濃度を高める。アメリカでは輸送時ガソリンを添加する不飲化処理がされる。

第一世代バイオエタノールの問題点は、主原料が食料としても有用なため、食料価格が高騰するなどの弊害が生じることだ。解決策として、第二世代バイオエタノールでは、セルロースを多量に含む木材や藁材などを原料候補とする。ただ、現在の技術でセルロースから糖を作りだすには多量のエネルギーが必要で、製造工程全体では二酸化炭素削減にならないという指摘がある。そのため、新たな分解酵素などの新技術開発に期待が集まる。

バイオエタノールが注目された背景である、原油価格の高騰や、石油資源の枯渇などの問題は、近年のシェールオイル技術の進歩によって、先送りにされる可能性がある。しかし、特に燃料資源のほとんどを輸入に頼る日本のような国は、第二世代バイオエタノール技術の開発を進めなければならないことに変わりはない。

材料によるバイオエタノール製造過程の相違