新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は12月17日、タイ王国において「キャッサバイモ」からデンプンを抽出した後の残渣(タピオカ残渣)からバイオエタノールを製造する技術の実証事業に着手するとし、NEDOと同国科学技術省国家イノベーション庁(NIA)が基本協定書(MOU)を取り交わしたことを発表した。

事業期間(予定)は、2012年度から2015年度で、施設規模は処理能力1000t/年(未乾燥キャッサバパルプとして)、バイオエタノール生産規模は80kl/年、予算規模は約7億円(内NEDOの負担は約5億円)、委託先はサッポロビールと磐田化学工業。

タイ王国では、近年の急速な経済発展により、エネルギー消費量は増加傾向にあるもののその大半を輸入に依存しており、エネルギー供給不足への対策が喫緊の課題になっている。タイ国政府はエネルギーの安定供給のためにバイオエタノールの増産を目指す意向だ。

こうした背景の下、NEDOは世界最大のキャッサバデンプン(タピオカ)輸出国であるタイ王国において、キャッサバイモからデンプンを抽出した後の残渣であるキャッサバパルプが未利用のまま大量廃棄されていることに着目した。

キャッサバパルプは、抽出されずに残ったデンプンと食物繊維が多く含まれる非食糧の農業残渣であり、トウモロコシなどの可食原料を原料とする第1世代バイオ燃料のように食糧用途と燃料用途の競合が起きない点が特徴だ。

一方、草本や木質類をバイオエタノールの原料とする第2世代バイオ燃料と比較して早期に実用化することが可能であるため、1.5世代バイオ燃料と呼ばれている。

今回の実証事業では、同国最大のキャッサバデンプン製造工場から排出される「キャッサバパルプ」を対象に、日本で技術開発された高温発酵酵母を適用し、80kl/年のバイオエタノール製造能力を持つパイロットプラントによるバイオエタノール製造技術の有効性を明らかにする形だ。

同技術は、キャッサバパルプの高濃度かつ高粘性のデンプン残渣であるモロミから、高温発酵酵母を用いて効率よくバイオエタノール製造を行うことを可能にする。同技術の有効活用によって、食糧と競合しない未利用資源の有効利用を検証し、同国におけるバイオ燃料増産に貢献することを目指すとした。

なお、今回の実証の成果を用いて同国において排出されるキャッサバパルプの総量である年間190万トン(2010年実績、風乾物)をバイオエタノールに変換した場合、年間約62万kl(1700kl/日)の製造が可能となる。

同国では、2022年のエネルギー使用量に占める代替燃料割合の目標を20.3%としており、この内バイオエタノール製造目標として9000kl/日を掲げていることから、今回の技術が同国の代替エネルギー目標の達成に資するものと考えられる(2011年時の製造能力:1300kl/日)。

今回の事業は2016年2月まで実証試験によるデータの評価、検証を行う予定だ。また、今回のキャッサバパルプからのバイオエタノール製造技術実証事業終了後は、キャッサバパルプを排出する事業者に対して同素材を原料とするバイオエタノール製造工場の建設・稼動を指導して1号機を立ち上げる計画である。

併せて、タイの同事業共同実施者と協力して、同高温発酵酵母によるエタノール製造技術の教育セミナーやPR活動によるフォローアップが行われる予定だ。

これにより、キャッサバ主産地であるタイ東北部・東部地域を初めとして、タイ王国への本技術の普及を図り、キャッサバデンプンの交易でタイと関係の深いカンボジア、ラオス、ベトナムなどのASEAN諸国への展開を図るとしている。

キャッサバパルプからのバイオエタノール製造工程フロー