千葉大学は、世界最小のナノ分子磁気メモリとなる1個の鉄原子への情報記録に成功したと発表した。

同成果は、カールスルーエ工科大学物理学系 宮町俊生博士、同大 大学院融合科学研究科ナノサイエンス専攻 山田豊和特任准教授を中心とした国際共同研究チーム(日本・ドイツ・フランス)によるもの。詳細は英科学誌「Nature Communications」にオンラインで掲載された。

情報を記憶する素材として広く使われているのが磁石であり、パソコンや録画機能付きTVで情報を記録するHDDは、小さな磁石が集まって作られている。1個の磁石のサイズを小さくすることで、さらに多くの情報を記録できる他、材料コストの削減、記録に必要な電力の削減が図れるといったメリットがある。

同研究チームは2009年、1個の原子からなる磁石を開発。しかし、磁石が非常に不安定で実用化は困難だった。今回、1個の原子からなる磁石の周りを有機物でおおい、1個のナノ分子とすることで安定させた。さらに、このナノ分子中の1原子磁石に電気を流して、磁石の強さを変えることに成功。この現象を利用して、磁石の強い状態をオン、磁石の弱い状態をオフとした1原子磁石・情報記録メモリを開発した。

研究チームは、今回の成果がパソコンなどの情報記録媒体向け磁石として、情報端末の小型化や、より一層の省エネに寄与するとコメントしている。

1個の鉄原子に情報を記録させるイメージ図