千葉大学は2月29日、高級な鉢物として知られるコチョウランにおいて、遺伝子組換えにより、従来存在しなかった青色の花色をもつ品種の作出に成功したと発表した。成果は、千葉大学大学院園芸学研究科植物細胞工学研究グループの三位正洋教授および陳東波特任講師と石原産業の共同研究グループによるものだ。

コチョウランは、交配によって白、赤、黄色など多種多彩な花色の品種が作り出されているが、バラと同様に青い花は交配された品種としては存在しておらず、育種家や生産者の長年の夢とされてきた。青い花がない理由は、コチョウランには花弁に青色色素「デルフィニジン」を作り出す遺伝子がないためである。

研究グループでは、石原産業が単離したツユクサ由来の遺伝子を、千葉大園芸学研究科植物細胞工学研究室においてコチョウランの培養細胞に導入し、個体再生および開花に至ったものだ。4年の歳月をかけて植物体を作り出し、2月15日に初花が開花した。

ツユクサは日本全国に自生する美しい小さな青い花をつける身近な植物で、この変種のオオボウシバナ(アオバナ)はツユクサを大型にした植物だ。その花は江戸時代から滋賀県で友禅染の下絵用染料として利用されている。

今回作り出されたコチョウランは、元々はピンクの花をつける品種であったが、ツクユサ由来の遺伝子を入れたことにより、ツユクサに似た美しい青色に変わった。

コチョウランは元々遺伝子組換えの難しい植物であったが、植物細胞工学研究室の15年以上の研究の積み重ねと石原産業中央研究所で蓄積されたバイオ技術の融合が今回の成功に結びついたというわけだ。

なお、これに先行してダリアにおいても同じ遺伝子を用いて青花個体の作出に昨年成功しており、この個体を他品種と交配することによって、見事な八重の青色品種を作出することにも成功している。

今後はさらにこの遺伝子を利用して、従来青い花色が存在していなかった多くの重要な花で青い品種の作出が期待されると研究グループはコメントした。

また三位教授に話を伺ったところ、青いコチョウランが店頭に出回るまでには、最低でも4年ぐらいはかかるという。遺伝子組換えの場合はその安全性の確認が必要なことと、コチョウランそのものが種を植えて花を咲かすまで3年はかかるからだそうである。なお、青いバラに関しての研究は行っていないが、それ以外にも複数の植物の花を青くする研究を行っているということで、今後も驚くような青い花を見せてくれそうだ。

千葉大が遺伝子組み換えにより生み出した青いコチョウラン