Intelは3月7日、「Intel Xeon E5ファミリ」(開発コード名:Sandy Bridge-EP)を発表した。すでに同プロセッサの概要などについては大原雄介氏のレポートとして掲載されているので、そちらを参照していただくとして、こちらは同日都内で開催された同製品の発表会の模様をお届けしたい。

登壇した同社日本法人インテルの取締役副社長の宗像義恵氏は、データセンター(DC)を取り巻く環境の変化を説明した。組み込み分野などでも同社がよく引き合いに出しているのが2015年までには150億台の機器がインターネットに接続されるようになるということだが、そうした端末が接続する先がDCであり、クラウドを介したさまざまなサービスやビッグデータの活用が今後のビジネスにおける差別化要因になり、そうした差別化を武器に成功を掴むためには、ユーザーにどれだけ魅力的な体験や"新しいユーザー体験"を提供できるかがポイントになるとした。

笑顔でXeon E5を手にするインテルの取締役副社長の宗像義恵氏

そうした環境の変化の中、同社に求められているのは「パフォーマンス」「機能」そして「コスト」の3点。今回のXeon E5ファミリはこれらの要求を考慮して開発されたプロセッサであるとする。その開発コンセプトは、企業などのIT部門が抱える課題を解決することで、同社としては「パブリックおよびプライベートクラウドの新基準となる」という位置づけを強調する。

IT部門に課された課題とXeon E5ファミリの概要

ここでインテル技術本部長の土岐英秋氏にスイッチ。Xeon E5ファミリの内部的な話と、実際にサーバとしての運用面における話を行った。

Xeon E5ファミリの300mmウェハを手にするインテル技術本部長の土岐英秋氏

前述もしているが、細かい機能面の話は大原氏のレポートを参照していただくとして、ざっくりとXeon E5の新機能を説明すると、プロセッサと同じダイにI/Oコントローラを統合する「Intel Integrated I/O」の採用により従来比でレイテンシを最大30%削減することが可能になったという。レイテンシが削減されたことで、これまで以上に高速なデータ転送が可能になるほか、I/OのパフォーマンスそのものもPCI Express 2.0からPCI Express 3.0へと変更されたことから向上しており、トラフィックのオーバヘッドの20%削減およびポートあたりの2倍の帯域幅向上を実現したという。

さらに「Intel Data Direct I/O」の搭載により、一定の条件下においてはネットワークからプロセッサにメモリを介さずにダイレクトにデータを送信できるようになるため、メモリの消費電力の低減を図ることも可能になっているという。

Intel Xeon E5に採用されている各種技術の概要

この消費電力の低減というのがIT部門の目下の課題となっており、Xeon E5ファミリでも複数のパワーマネジメント機能が提供され、パフォーマンスに応じて電力消費量を可変させ、システム全体として不要な電力の消費を抑えつつ、パフォーマンスを維持することに成功したという。ツールとしても、Intel Node ManagerとIntel Datacenter Managerが各種管理ツールベンダなどのツールに統合が進められており、ラック単位やサーバ単位での消費電力設定を行うことで、DC全体でのワークロードの最大化が可能になるという。

実際にゲストとして登壇したNTTデータの上苙健氏によると、「これまでのDCにおける電力の低減はファシリティ部分が中心であったほか、電力効率の良いサーバへの置き換えなどで一定の効果を得ていた。しかし、負荷に応じて消費電力を増減させることはできず、BCP対応として一部のサーバそのものを止めて、重要なサーバのみ稼動させるという必要などがあり、ユーザーの大切なデータを保護できないという場合があった。しかし、今回のIntel Node Managerを用いた事前検証では、サーバの消費電力に上限を設けることで、すべてのサーバを停止させずに電力の削減が可能になった」という。

具体的な事前検証の内容は、4台のXeon E5搭載サーバを用いて、ピーク電力の削減と非常時の運用検証を行うというもので、どのような用途であればサーバがダウンしないのかなどのチェックが行われた。結果として高負荷時でも最大性能の90%でキャッピングしても問題がないこと、ファイルサーバのような低負荷時では70%までキャッピングしても問題ないことを確認。シミュレーションでは、7台搭載ラックを100ラック用意した状況では空調などを含めてDC全体で高負荷時で約18%の削減が可能との見積もりが得られた。

NTTデータが実際にXeon E5搭載サーバ4台を用いて行った事前検証では、ピーク電力の削減と非常時のDCの運転時間延長が認められたという

また非常時のDCの運転時間も、自家発電の燃料タンクの標準維持時間を36時間と想定した場合、約1.8倍の64時間の稼動(サーバの総電力を140Wで維持し、PUEを1.6とした場合)を実現できる見積もりとなり、非常事態でもこれまで以上に安心できるソリューションを提供できるようになったとする。

なお、同プロセッサを搭載したサーバ製品および対応した管理ツールなどは、すでに複数のベンダから提供されることがアナウンスされている。

Xeon E5ファミリのパッケージと300mmウェハ