東北大学(東北大)の阿尻雅文教授と化学研究評価機構(JCII)は、有機材料と無機材料のそれぞれ固有の優れた特質を両立させる材料創成の鍵となるナノ粒子を合成できる超臨界連続水熱合成装置を開発したことを発表した。同装置を活用することで、年間10tのナノ粒子の連続合成が可能となるほか、合成したナノ粒子を用いた絶縁高熱伝導シート材料では、従来比10倍となる世界最高クラスの熱伝導率を達成できるようになるという。

今回開発されたナノ粒子高速大量合成装置

自動車や電気・電子分野における材料開発では、従来以上の高機能性が求められるようになってきており、単一の材料・単一機能を対象とした改良研究では不十分とさえ言われるようになってきた。そのため近年、成形性、軽量性などに優れる「有機材料」と、耐熱性、熱伝導性、絶縁性などに優れる「無機材料」を混合し、互いの良い特性の両立を実現する「超ハイブリッド材料」の実現が求められるようになってきた。

しかし、有機材料に無機材料を単純に混ぜるだけの従来技術では、無機材料の性質が付加されるものの、有機材料の長所が失われる、いわゆる「トレードオフ(相反機能)」が生じてしまうという課題があった。

超ハイブリッド材料の概念図

この解決方法として、ナノサイズの無機粒子の周りを有機材料でコーティング(表面修飾)し、有機材料内に高濃度で配置(分散)させる手法が研究されているが、その工業的大量合成法は確立していないほか、従来法では合成の際に「高価な修飾剤・触媒」や「大量の有機溶媒」が必要となり、これらを必要としない安価で簡便な高速大量連続合成プロセスの開発が求められていた。

超臨界水熱合成は、374℃、220気圧以上の水中(超臨界水)で、ナノ粒子を合成する方法で、有機分子や無機分子を水と任意の割合で混合し、高濃度で有機修飾ナノ粒子を合成するもので、今回の研究では、この超臨界水を反応場として用いた「超臨界水熱合成法」を用い、無機粒子表面に有機修飾を行う、ナノ粒子の高速・大量連続合成装置の開発が行われた。超臨界水を用いることで、無機材料と有機修飾材料を任意の割合で高濃度混合することが可能となったほか、有機修飾剤として油脂などの安価な原料を用いることができること、水そのものが触媒として作用するため新たな触媒が必要ないこと、及び合成されたナノ粒子が有機相に抽出・濃縮されるため取りだしが容易であることなど、省エネルギーで環境負荷の少ないプロセスが実現できたという。

例えば、パワーデバイス用材料向け熱伝導用フィルムシートマット材としてBN(窒化ホウ素)粒子を高濃度充填したハイブリッド材料の開発が求められているが、従来手法ではBNの充填率を上げると粘性が高まるため、フィルムシート状の成型加工は不可能であった。また、ボイドの発生により、熱伝導率のみならず、絶縁破壊電圧が急激に低下する問題があったが、同装置を用いてBN粒子の有機修飾を行ったところ、高充填率下においても、粘性が低下したほか、ボイド生成も抑制できることが確認されたという。結果として、高熱伝導率を有するフィルム状シートの連続成型が可能となり、耐絶縁電圧40-50kV、熱伝導度20-40W/m・Kを実現させることができたという。

有機修飾ナノ粒子を利用した高熱伝導材料とその特性比較

なお、同プロセスは、(水)酸化物、複合酸化物、硫化物、(複合)金属など、幅広い材料への応用が可能であり、汎用的な有機修飾ナノ粒子合成法としても期待されるという。同装置は、今回の研究プロジェクト終了後、アイテックから販売される予定。