性能比較:レイテンシと処理能力

イーサネットのスイッチ・デバイスのレイテンシは減少し続け、業界をリードするイーサネット・スイッチは、現在、200nsのレイテンシまで来た。しかし、RapidIOのスイッチ・デバイスのレイテンシは100ns以下であり、同様に減少し続けている。企業がシリコン・プロセスの微細化やより高い物理層速度を利用すると共に、両方の技術に対してこの傾向は続くだろう。エンド・ツー・エンドのパケット終了は、イーサネットでは10μsより長く、RapidIOでは1μs以下である。

RapidIOはリンク層のエラー回復によって保証された配信を提供する。リンク層のコントロール・シンボルはコントロール・ループのレイテンシを最小化する。コントロール・シンボルも、さらにレイテンシを最小化するためにパケットに埋め込んでもよい。ロスレスDCEは、いまだに、オフロード・エンジンあるいはレイテンシを加える傾向があるソフトウェア・スタックを要求している。

RapidIO Gen2スイッチは、1ポート当たり20Gビット/秒を提供する。Tsi721はデータをPCIeからRapidIOは、および、その逆方向へ変換し、64バイトの小さなパケット用に16Gビット/秒の最大ライン・レートのブリッジングを提供する。これは、一般に利用可能な10Gビット・イーサネットより高いが、近々利用可能になる、増加しつつある40Gビット・イーサネットのソリューションよりも確実に低い。

生の帯域幅の観点からは、イーサネットはRapidIOの先を行っている。しかし、いったん、新たなRapidIOの物理的仕様やロードマップが利用可能になれば、このギャップは小さくなる。RapidIOのパフォーマンスとプロトコル効率は強健なプロトコルのカプセル化を可能にする。メッセージング、および、データ・ストリーミングは、ネイティブなイーサネット・カプセル化性能を提供する。

セキュリティ

RapidIOの受信側セキュリティのためのTsi721の特徴は、ハードウェアによって強化され、目的地のIDの1組が受理されるかどうかを決められることである。RapidIO 2.1仕様によって定義された各パケット・タイプはそれぞれ受理したり廃棄したりすることができる。送信側のセキュリティは、ソフトウェアによって実行されなければならない。

スイッチ・ファブリックのセキュリティは、システム・ホストによって実行される。パケットがノード間でルーティングされることができるようにファブリック・ルーティング・テーブルが構成されないかぎり、各ノードは他のノードと通信することはできない。各スイッチ・ポートにも4つのフィルタがあり、それは、任意のパケットの最初の20バイトまでをマスクしマッチングをとり、廃棄することができる。この特性は、システム・ホスト以外のどんなノードもスイッチ・ファブリックを要求したり構成したりできないようにすると同様に、DMAの読み出し/書き込み処理のためのdestIDやアドレス範囲を適用するために使うことができる。

デバイス、システム電力、コスト

メッセージのインオーダー配信では、信頼性を保つためにRapidIOの物理層がイーサネットのトランスポート層のプロトコルを置き換えるので、RapidIOは、ほぼ間違いなくイーサネットよりも電力効率が高い。イーサネットは、プロトコル・オーバーヘッドがより高いので、転送されたデータ当たりの消費電力がはね上がる。

イーサネットのプロバイダは、10Gビット/秒のイーサネット・ポートにはプレミアム価格を請求し、40Gビット/秒のポートのためには、さらに大きなプレミアムを請求する。10Gビット/秒のイーサネット・シリコンのシステム・ポート当たりの価格は1000ドル以上、そして10Gスイッチ・デバイス・ポート当たりのコストは、大量購入時で10ドル以上かもしれない。より複雑でないパケット終了、より小さなパケット・メモリ、および無分類要求などを目的とする場合、RapidIOに対するシステム・ポートのコストは、大量購入の場合は、10Gポート当たり4ドル未満のスイッチ・デバイスを使って、およそ55ドルである。

エコシステム

エコシステムの観点から見ると、30年の歴史をもつイーサネットの方が、10年強のRapidIOエコシステムよりも大きな利点がある。多くのサプライヤが、シリコン、プラットフォーム、ツール、ソフトウェアを提供している。イーサネットのハードウェア・エコシステムは、集中したネットワーク・カード、スイッチとルータのプラットフォーム、サーバとストレージのプラットフォームを提供する。ソフトウェア・エコシステムは、ネットワーク管理ソフトウェア、MicrosoftのWindows、Linuxなどさまざまなソフトウェアを提供する。さらにプロトコル解析、パケット傍受、トラフィック・ジェネレータ、ネットワーク試験装置、準拠性テスト・ストーリーもある。RapidIOには、強力な組み込みOS、Linux、OFED、プロトコル解析、システム診断、複合サーバ・プラットフォームがある。Gen1の準拠ストーリーがあり、Gen2の準拠ストーリーも開発中である。Windows OS、VMware、ファブリック・アダプタ・ソリューション、NPUデバイス、ストレージ・プラットフォーム・サポートの選択肢は、まだ限られている。

結論

エンタープライズ・サーバ、データセンタ、クラウド・コンピューティング、ハイパフォーマンス・コンピューティングにおいて、10Gビット・イーサネットから40Gビット・イーサネットへの移行に必要となる再設計作業は、競合する相互接続ファブリックに、新規採用の機会を与える。

その中で、20Gビット/秒の処理能力を備えたRapidIO Gen2は有力な候補となる。RapidIOの小さく、未成熟なエコシステムを強化することができるシステム設計者は、スイッチング、PCIeブリッジング、および今日利用可能なすべての組み込みCPUソリューションによって、20Gビット/秒へ移行することができる。得られるものは、高いスケーラビリティと信頼性を備えたシステムである。さらには、フォールト・トレラントなキャリア・クラス・システムの利点を得られると同時に、劇的なコスト削減、低消費電力化、低レイテンシ化、さらに優れたフロー制御やQoSも得られる。

著者紹介


Trevor Hiatt(トレバー・ハイアット)
米IDT(Integrated Device Technology)
シニア・プロダクト・マネージャ
IDTのシリアルRapidIO製品の戦略的仕様策定、プロジェクト管理、製品マーケティングの責任者を務める。
カリフォルニア大サンタバーバラ校において電気工学とコンピュータ工学の理学士号を取得